縦横無尽―――エマールの“ただならぬ”ピアノへの期待〜新しいレパートリーと古いレパートリーの結婚〜[公演情報]
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 少なくとも最近まで、エマールというピアニストには、ややとっつきにくいというイメージがまとわりついていたのかもしれない。というのも、レパートリー的に難解な現代音楽のスペシャリストとしての認識が強かったからだ。

 それも無理からぬことで、初来日では才気ほとばしる鋭利なリゲティを演奏し、95年には「ブーレーズ・フェスティヴァル」で類稀な資質を示した。また1998年にはデュトワ指揮N響定期に登場、メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」を徒ならぬ集中力で弾き切っている。また弱冠16歳でのメシアン・コンクール優勝やブーレーズの主宰するアンサンブル・アンテルコンタンポランでの活躍、さらにメシアンを筆頭にリゲティ、アイヴズ、ライヒなどの作品がひしめいているCD録音などがその印象を加速させていたのだろう。
 
 ところが2003年、エマールは何とニコラウス・アーノンクール指揮ヨーロッパ室内管とベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を発表して世界中をアッと言わせた。またベートーヴェンのトリプル・コンチェルトや合唱幻想曲などでも共演、この分野でも圧倒的な音楽性を紡いでファンを唸らせたのである。もっともそれ以前の2000年頃、メシアンの「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」をCDリリースした直後、アーノンクールとドヴォルザークのピアノ協奏曲を録音するなど、多彩な活動は今に始まったことではない。

 とはいっても、近年エマールが方向性を変えた訳でも、テリトリーを広げた訳でもない。実はエマールは8歳の頃、ベートーヴェンやドビュッシーと同様に、メシアン、シュトックハウゼン、ブーレーズ、シュニトケなどに親しんでいたのだ。つまり一般には区別されてしまう現代音楽と古典派やロマン派の作品を、まったく同じ感覚で聴いたり弾いたりしていたのだという。だからこそエマールの最終的な目標は「新しいレパートリーと古いレパートリーを結婚させること」。これですべてに得心がいくではないか。

 そのエマールの次なる挑戦はバッハ。それも未完の大作「フーガの技法」である。20曲からなるこの作品はもちろん鍵盤楽器のためではあるが、各曲がチェンバロやオルガン、或いは室内楽のために書かれたと想定されている。その多様性や緻密な構築を、エマールはあえてモダン・ピアノに投影したのである。

 既に全曲を収録したCDは著しく高く評価されているが、日本でのリサイタルは「フーガの技法」からの抜粋と、メシアン「8つの前奏曲」、ベートーヴェン「ソナタ第31番」などが織り込まれた垂涎のプログラム。この構成もエマール独自のこだわりによるが、今年生誕100年のメモリアルを迎えたメシアンが若くして書いた極めて美しい作品とベートーヴェンの最後期のソナタ、その間にバッハが顔をのぞかせるコントラストはまさにエマールならではのほとばしるような閃きである。

 その創意を汲み取って理知的な世界に遊ぶのもいいし、純粋にエマールの音楽にじっくりと身を浸らせるのもいい。どちらにせよ歴史に残る、まさに一期一会のコンサートである。

◎音楽評論家 真嶋 雄大


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【公演情報】
7/15(火)東京オペラシティコンサートホール (東京都)

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2008-06-18 17:20 この記事だけ表示
 
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