ヴァイオリニスト篠崎史紀スペシャルロングインタビュー!7/19(土)サントリーホール公演へ向けて[インタビュー]
『篠崎史紀 presents ハートストリングスな夏の夜』公演へ向けて
篠崎史紀スペシャルロングインタビュー!


インタビューが行われたのはゴールデンウィーク直前の木曜日。「終日冷たい雨」という天気予報が見事にハズれて、東京は快晴微風の清々しい午後となった。我らがMAROさんこと、ヴァイオリニスト篠崎史紀氏は、西新宿のカフェテリアで、新緑が眩しい街路樹に時折目をやりながら、良く通る、しかし柔らかい声で語り始めた。

maro_w170.jpg◆今回のプログラムは、一般的に言うところの「小品」が多いようですが、分かり易さのようなものは意識されましたか?(プログラム詳細はページ下部をご参照ください)

MARO 「よく『小品は分かりやすい、シンフォニーは分かりにくい』と言われますけど、そういうことではなくて、交響曲と今回演奏するような曲とは面白さが違う、ということです。それは、ちょうど古典落語と新作落語のようなもの。古典落語の中には1時間を超えるものもある、一方はショートショートの新作落語、どちらも面白い!面白さが違うだけです。クラシック音楽においては、作曲家がどういう意志でその曲を書いたのか?が、大切な出発点になるわけですが、例えばベートーヴェンを例にとると、弦楽四重奏で彼はまず「実験」をして、その結果を交響曲で「結晶」にした。ではピアノ曲は?というと、室内楽よりさらに前の段階、実験のための実験のようなものと、たとえばある女性への気持ちをそのまま書いたようなものの両極端に分かれていると思います。今回の演奏曲目の中で言うと、例えばエルガーは「愛の挨拶」で、奥さんの誕生日のために「気持ち=変らぬ愛情」を曲にした。でも交響曲はそうではない、彼はここでは「意見や哲学」を書いた。このように小品と呼ばれるものは作曲家の感情や気持ちがそのまま書かれているものが多いので、結果として聴き手に届きやすい、ということなのだと思います。

◆実際にクラシックのコンサート!ということになると、やはり曲が長くて『好きな部分が来る前に眠ってしまった』という声もよく聞きます。初めてクラシックを聴こう、という方には30分、1時間の交響曲などは、高いハードルになってしまいがちですね?

MARO 「そのハードルが、大切なんですよ。実は僕はWHO(世界保健機関)の評議員をやっているのですが、以前学会で、ある博士が、『クラシック音楽は、人間が向かって行って、はね返される、どうにもならない壁!を知ることが出来る身近なもののひとつ』と発表していました。スゴく面白い!今の子供達は自分が要求したら、何でもモノが落ちてくる、我がまま言えば何でも手に入る、気に入らなければ、例えばゲームだってリセットすればいい。自分の力ではどうにもならない、という状態が少なくなっている。だからそういう「壁」にぶち当たることを学ぶには、クラシックは、ひとつの手頃な対象だ、というのですね。壁に直面した時に、子供は我慢することや、ぶつかっていこうとする挑戦心や、理解するための工夫などを身につけていく。こうしたことを学ばずにオトナになった人々が作る社会は、すぐに潰れてしまうだろう、とその博士は発表していました。

◆では、今、世の中にたくさんある『難しいクラシックをやさしくします』という一連の動きは、ナンセンスだとお考えですか?

MARO 「もちろんそれもまた必要なことです。大切なのは、物事は普通、いろいろな方向性を持って進むべきなのではないか?と思うのですが、何故か日本のクラシック業界の動きは、みんな同じ方向、つまり「難しくない、やさしいですよ」だけに向いているのが気になるのです。それにそもそも「やさしい」と言っても、耳にしたことがありそうな曲を流しているだけで、本当にクラシックを簡単にしたことはないのですよね。例えば、交響曲のある楽章だけを選んで一夜の演奏会をするとか・・・」

◆演奏会ではありませんが、OTTAVAはまさにそういう放送をしているので、篠崎さんにそう言って頂けると、本当に勇気百倍です。ただこうしたやり方が作曲家の意志を反映できているのかどうかは分かりませんが。

maro_w150.jpgMARO 「作曲家というのは、哲学者であったり、自分の人種や民族を世の中に提示していく目的や、新しい考え方や技術を世の中に示して行くために音楽創作をする、いわば『生産者』です。対して僕ら演奏家は『再生者』。生産者である作曲家の意志は尊重しつつも、それを自分の中に取り込んで、新しいものとして聴衆に届けていくのが僕たちです。それはちょうど、作曲家が作ったレシピを元に、自分の味覚や嗅覚などを駆使して、目の前のお客さんに料理を出すシェフや板前さんのようなものです。僕が演奏家としていつも気をつけているのは、万人の口に合うものを作るのではなく、自分の腕と感性を信じて料理する『頑固な板前さん』でありたい、ということ。自分ならではの料理を作ったら、あとはお客さんがどう評価してくれるか?それで良いと思っています。作曲家、演奏家、そしてOTTAVAのようなメディア、それぞれが、さまざまな考えと感性で音楽を聴衆に届けていかないと、面白くならないですよね。

◆今回のようなコンサートと、日頃のNHK交響楽団のコンサート・マスターとしての篠崎さんと、演奏家としての取り組み方は、やはり違うものなのでしょうか?

MARO 「立場ということだと、大きく違いますね。オーケストラというのはメンバー100人なら100通りのアイディアがあって、そこに指揮者という、ひとつのアイディアを持った人がやってくる。指揮者は原則いつもゲストですから、僕はホストとして、指揮者のアイディアによってコンサートが無事遂行できるように、100人の考えと指揮者の考えとの融合点を探ることが大切になるわけです。交響曲のように大きな作品になればなるほど、作曲家の主張は強くなりますから、それを今回の指揮者がどう解釈しているか?を理解して、メンバー全員でそれを共有できるようにするのが、コンサート・マスターの最大の仕事なわけです。一方今回のようなアンサンブルの時は、人数も少ないし、指揮者もいないから、全員の意見をどこでまとめあげていくか?というリハーサルになります。話し合いをしながら進めていく、という感じです。」

◆意見が合わなくて、もめることもあるでしょうね?

MARO 「僕は九州出身で、醤油ラーメンが許せない人ですから(笑)。この間も浅草に老舗の天丼を食べに行ったら、出て来たエビ天が黒く揚がっていてびっくりした(笑)。料理の好みの数と、コトバの方言の数だけ音楽は存在する、と言われますからね。ただラーメンはラーメンで、饂飩や蕎麦にはなりませんから、作曲家が書いたラーメンと言うレシピに、みんなでどんな味をつけていくかが面白いのです。」

◆今回の編成は?

MARO 「5(第1ヴァイオリン)、4(第2ヴァイオリン)、3(ヴィオラ)、3(チェロ)、1(コントラバス)の16人の弦楽合奏です」

◆なぜかメンバーは全員男性とか?

MARO 「これは僕の個人的な意見なのかもしれませんが、社会における柔軟性というか、バランスよく現実も考えながら新しいモノを作って行くのは、女性の方が得意だと思うのです。対してオトナになっても子供の頃の夢が捨てきれなくて、危ない、と思っても冒険してしまうのが、僕たち男性だと思っているのです。今回はそんな「男らしさ」で楽しんでみようと思いました。演奏でも失敗(ズレたりすること)の可能性があるのが分かっていても、無理やり飛び込んで行くような(笑)」

◆では、今回のコンサート、ギリギリ勝負!というような場面も・・

MARO 「あるでしょうね。危ない、と思っても牌を打つのが男だと思っていますので(笑)。今回のプログラムで、一番のメインになるのは、チャイコフスキーの『弦楽セレナーデ』です。これは「オー人事」のCMで有名になった曲ですが、本来はセレナーデというと「音のラブレター」。今回はそんな原点に返って「夢を語れる」16人で思い切りロマンティックに演奏したいと思っています。

◆MARO弦楽合奏団という名前については?

MARO 「マロは僕のニックネームなのですが、このアルファベット4文字MAROにはある意味を持たせています。それぞれがどんなワードの頭文字なのか、推理してみてください。」

◆答えは、コンサート当日の「華麗なるトークコーナー」で発表ですね。他にも普通のコンサートではお目にかかれないサプライズも用意されているという噂を耳にしましたが、ここではお話しいただけませんね(笑)。最後に月並みですが、オーディエンスの皆さんに、ここを聴いてもらいたい、というところはありますか?

MARO 「クラシックに限らず、ライブというものに『こう聴かなければいけない』というものはないので、好きなように楽しんでくれれば・・・僕は、クラシック音楽のスゴさは、『世界中に通じる』ことだと思っています。例えばDurの音(長調:例えばドミソ)を聴くと何となく楽しそうな感じがする。それがミを半音下げてMollの音(短調:例えばドミ♭ソ)になると、何となく悲しげです。あたりまえのことのように思われがちですが、よく考えるとこれはコミュニケーション・ツールとしては最強なのです!どんな国や地域、民族の人でも同じ印象を抱くわけですから。コトバに頼ることなく、一瞬にして世界中に同じメッセージを伝えることが出来る!クラシック音楽は、そんないわば「魔法のコミュニケーション・ツール」だと思っているので、来てくれる皆さんに、その「魔法」を体験してもらえれば嬉しいです。

[インタビュー/構成] OTTAVA ミュージック・ディレクター 斎藤 茂

篠崎史紀 プロフィールと最新情報はこちら!
クラシック専門のインターネットラジオ局「OTTAVA」(オッターヴァ)


【公演情報】
〜コンテンポラリー・クラシック・ステーション OTTAVA
1st. Anniversary あの名曲シリーズ〜
『篠崎史紀 presents ハートストリングスな夏の夜』

7/19(土) サントリーホール(東京)

≪出演≫
篠崎史紀(N響コンサートマスター)
MARO弦楽合奏団

≪演奏曲目≫
M1 モーツァルト アイネ・クライネ・ナハトムジーク
M2 バッハ G線上のアリア
M3 J・シュトラウスU ピチカート・ポルカ
M4 パッヘルベル カノン
M5 エルガー 愛の挨拶
M6 クライスラー 愛の喜び
M7 J・シュトラウスU 美しく青きドナウ
M8 モンティ チャールダーシュ
M9 チャイコフスキー 弦楽セレナーデ

チケット発売中!
>>公演の詳細とチケット申込みはこちら!


2008-07-03 10:55 この記事だけ表示
 
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。