音楽とダンスが織り成す芸術!世界が絶賛した話題の『アポカリプス―黙示録』で演奏するピアニスト・加古隆さんにe+が独占インタビュー![インタビュー]
 日本を代表する作曲家でピアニストの加古隆、世界的な振付家で演出家でもある山海塾の天児牛大、ヨーロッパを中心に活躍するブラジル出身のダンサー、イズマエル・イヴォ。彼ら三人がジャンルや表現方法の枠を軽々と飛び越え、共に創作した作品が『アポカリプス―黙示録』だ。1989年の初演時に大評判となり、伝説となったそのステージが約20年という時間を経て、再び蘇ることになった。作品が誕生したいきさつや、長い時を越えて再び取り組むことになったきっかけなどを、加古隆に語ってもらった。

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■初演は、ダンサーとピアニストとのバトルのようなものでした

――1989年が初演ということは、それから約20年ぶりということになりますね。そもそも、イズマエル・イヴォさんとコラボレーションすることになったいきさつというのは?

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 1985年の夏、僕はミュンヘンでレコーディングをしていたんですね。クローズされている劇場でやっていたんですが、そこでピアノを弾いているときに、ひとりの黒人ダンサーがピアノの周りをまわりながら舞っているというイメージをもったんです。それがこの作品の生まれたきっかけになりました。そしてその後1988年に、ソロで踊っている黒人のダンサーで、ブラジル人なんだけれどもずっとドイツで活躍している方がいると紹介してくれる人がいて。それがイヴォさんだった。彼がちょうどその直後に日本のダンスフェスに呼ばれて来日したというので観に行ってみたら、すごく自分と共通するものを感じて。ぜひ、この人と一緒にやってみたいなと思ったんです。さらにその数日後に僕のソロコンサートがあったんですが、彼は帰国を延ばして聴きにきてくれて。それで、二人でやろうということになったわけです。

――お互いのパフォーマンスを観て、共感するものがあった。

 そうですね。音楽家とダンサーという立場だし、日本人とブラジル人なんだけれども。アーティストとしては同じ世界に属している人だなという感じがしたんです。それをきっかけに、初演に向けて準備を始めたんですが、二人だけで舞台作品を作り上げるのは危険であると思いましてね。もっと第三の目というか演出をしてくれる人、作品に一本の骨を通してくれる人が必要だということになり、それで音楽にも造詣が深くて本人も踊られる、山海塾の天児牛大さんにお願いすることにしました。

――初演で感じた手応えや、やってみて新たに得たものはどんなものでしたか。

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 すごい充実感でした。とにかくダンサーとピアニストとの、バトルのようなものなんですよ(笑)。当時はまだお互いに若かったから、あるだけのエネルギーをステージで全部ぶつけあって。人間がここまでパワフルでエネルギーを出すことができるものなのかと、たぶん観に来た人は驚いたんじゃないかな。それから、普通のコンサートとは違い、ダンサーの身体の動きと音とでコミュニケーションをしていく舞台だったので、それもすごく新鮮でした。とにかく素晴らしい作品を作ることができたということは、実感できましたね。

――そして今回、東京で再々演しようと思われたのはなにかきっかけがあったんですか。

 1992年に一度再演をやったあと、長い年月がたっていたこともあって、もうこの作品をやることはないだろうと思っていました。非常にパワーを使う作品でもありましたしね。それが一昨年の夏に、イヴォさんのほうから彼がずっとやっているウィーンのモダンダンスのフェスティバルで再演したいんだけど、と。僕自身は弾けると思ったので、だからあなたが踊れるのなら大丈夫だよと返事をしました(笑)。それでもう一度ウィーンで3日間、シュツットガルトで4日間やったんです。これが、予想した以上に素晴らしかった。長い時間がたっているし、年齢的にも心配していたんですが、彼は見事に自分の身体を維持していましたね。お互い、20年近い経験が随所に生かされていて。それで、これはもう一度、日本にもってくるべき作品なんじゃないかなと思ったわけです。もちろん、演出をお願いした天児さんの存在も、この作品にはものすごく重要なんですよ。二人で作り上げたものではなく、三人で作り上げたものなので。彼が作る舞台空間の美しさ、それはいわゆる舞台美術で飾り立てたものではない。何もないんです。あるのはピアノだけで、僕がいてイズマエルがいる。その何もない空間がものすごく美しく、特別な空間になっているのは彼の演出のおかげ。照明の力も大きいですし、余分なものをそぎ落としたシンプルさもポイントだと思いますね。

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■他には存在しない舞台。そして今回が最終公演だと思ってください

――本番に向けて、今、一番楽しみにしていることはどういうことですか。

 僕が通常やっているコンサートや、曲のスタイルを楽しみにしてきてくれているファンの方もいるでしょうけど、今回の作品は一味違うと思います。一味違うけど、僕自身は同じレベルで深く感じることができ、楽しむことができるものだと思っているので、そういうふうに聴いていただけたら一番うれしいなぁ。あとはウィーンの公演からさらに2年たっていますので、この2年の経験も生かした上でまたアップグレードして(笑)、ウィーンの公演をも超えられるような舞台にしたい。二人とも現役でやっているわけですからね。

――もしかしたら劇場には、加古さんの世界をまだ知らないダンスファンも大勢いらっしゃるかもしれません。

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 当然、そういう方もいらっしゃるでしょう。僕はそんなにダンスに詳しいわけではないですが、だけどね、ダンスファンの方が観た場合これは立派なダンス作品だと思うはずです、それは間違いない。でも、この作品はある意味では僕のコンサートでもあるんですよね。音楽だけでも楽しんでいただくことができますから。そのふたつが一緒になって、しかもお互いにライブで反応し合うという。こういう作品って、他には存在しない舞台だと思うんですよ。古今東西どこに行っても、おそらくこれから先も、ないと思います。僕自身もたぶん、もうできないしね(笑)。かなり稀有な例だと思うんだ、この作品は。だからこそ、これだけ年齢を重ねていても、まだやれるのならやってみたいと思ったわけなので。

――本当に、貴重な体験ができそうな舞台です。

 はい、それはもう。そしてこれが間違いなしに、最終公演だと思ってください。

――この機会を逃したら、ものすごく後悔しそうですね。そして、今回は加古さんの代表作でもある『クレー』も演奏されます。これはどういう作品なんですか。

 これは『アポカリプス』とほぼ同じ時期の、1985年くらいを中心に作曲し、1986年に発表した作品です。スイスの画家パウル・クレーの絵から12作品を選び、それぞれのイメージで作曲したピアノ曲なんです。ちょうどこの頃から、違うジャンルのアートがコラボレーションすることがもてはやされるようになったというか、その最初の頃だったんじゃないかな。僕自身も、他のジャンルのものとコラボレーションすることを始めた、最初の作品なんです。そして、この静止画とのコラボレーションが、人間の肉体が動くダンスとのコラボレーションに広がっていくきっかけにもなったということですね。

――加古さんのコラボレーション作品としての第一歩と第二歩、その両方が今回の舞台で披露されるわけですね。そしてこちらも、演出をされるのは天児さんです。

 はい、これは今回初めて天児さんに演出をお願いすることになりました。今までコンサートでは曲だけを弾いていたんですね。それを今回は視覚的な面でも天児さんにアイデアを出してもらって、クレーの絵を映像素材として見せたり。その見せ方も、いろいろと工夫してやりたいと思っているところです。

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――耳だけでなく、目でも楽しめる。


 もちろん! ちょうどデビュー35周年の記念する公演でもありますし、いずれにしても今回の舞台は、“アートオブコラボレーション”と副題をつけていますけれども、僕のコラボレーション作品の自分なりのひとつのまとめ、という感じです。ぜひ、楽しみにしていてください。


取材・文/田中里津子


公演名:加古隆 アート オブ コラボレーション コンサート 〜アポカリプス〜

第一部「クレー 〜いにしえの響き〜」〜パウル・クレーの絵によせて〜
第二部「アポカリプス」〜一人のピアニストと一人のダンサーと〜

ピアノ:加古隆
ダンス:イズマエル・イヴォ
演出:天児牛大(山海塾)

公演日:10/17(金)〜10/19(日) Bunkamura シアターコクーン (東京都)

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2008-09-10 14:38 この記事だけ表示
 
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