第10回  「バー・ブタオのハイドンって男はね」 vol.3 スター誕生in London編[公演情報]
ハイドン没後 200年記念 ハイドン・イヤー最大級のプロジェクト!! 新日本フィルハーモニー交響楽団 フランス・ブリュッヘン・プロデュース  “ハイドン・プロジェクト”ロンドン・セット全曲演奏会

新日本フィルハーモニー交響楽団 フランス・ブリュッヘン・プロデュース “ハイドン・プロジェクト”ロンドン・セット全曲演奏会 第10回目はお待ちかねのLondon編のお話です!

ブタオ・ママ:「みんなごめんなさい、そろそろお店も閉店の時間よ。 じゃあね、せっかくだからその後ハイドンがどうなったかの話でおしまいにしましょう。 これまでの人生で様々な経験を積んだ彼が、その後ロンドンで名声を得ることになった話・・・」

籠の中から、新世界へ

ブタオ・ママ:
時は流れて1790年、約30年にわたって仕え続けたエステルハージ候が亡くなられたわ。 跡を継いだのは音楽を知らないドラ息子でね、あんなに素晴らしかったオーケストラは解散、 ハイドンは楽団長の名前だけ残されて事実上の年金生活に入ったの。 で、この頃ウィーンには、モーツァルトがいた。ハイドンが彼に出会ったのはその約10年前。 ハイドンの弦楽四重奏op.33に感銘を受けたモーツァルトが彼を表敬訪問してハイドン・カルテットを披露した時ね。 それは、天才的な作品だったわ。ハイドンはその後しばらく弦楽四重奏を書けなくなるくらいショックを受けたのよ。 でも同時にものすごくモーツァルトを愛したの。特に彼のオペラを絶賛したわ。普通は嫉妬に狂うところだけど、 ここがハイドンの優れたところ。だから、エステルハージ家から実質上クビになったハイドンは、 迷わずモーツァルトと愛するゲンツィンガー夫人(参考:コラム第8回 )のいるウィーンに移ったの。 この頃には作品がパリで売れ、作曲の注文もたくさん受けるようになっていたわ。楽譜産業も隆盛してきた頃で、 すでにハイドンの名声はヨーロッパ中にきこえていた。そして遂に、あの男がやってきたの―そう、ロンドンの興行主ザロモンよ。 彼がウィーンまで契約書持ってやってきて、「是非ロンドンに!」と破格のギャランティーで招待されたのよ。 ハイドンはすぐにこれを受けたわ。彼にとって大都市ロンドンが持つ物理的な条件も大きな魅力だったのよね。

P.ザロモン
自身もヴァイオリニストで、ハイドンのロンドン公演でコンサートマスターを務めたとか。 といっても、かなりの商才をお持ちのようです。




モーツァルト
モーツァルトが出立するハイドンとこんな会話をしたとか。 M:「あなたはまったく世間慣れしれおられないし、言葉もほとんど話せないじゃありませんか。」 H:「私の言葉は、全世界で理解されるよ。」 M:「私は心配です、最後のお別れをしているんじゃないかと・・・」 そんなモーツァルトの予感は彼自身の死によって現実のものとなったのでした。

ロンドンでの人気はアイドル並!?大スター・ハイドン

ブタオ・ママ:
ハイドンが訪れたロンドンは、ちょうど産業革命直後。見たこともないような高い建物が次々に建ち、たくさんの人がいたの。 そして特筆すべきは、ここではかつて貴族のためだけのものだった音楽が一般市民のためのものだったのよ。 庶民がチケットを買って音楽を聴く、そんな時代が到来していたのね。街では様々な音楽協会がしのぎを削ってあちこちで音楽会が開催され、 新聞ですぐに音楽評が掲載される。全てがハイドンにとってものすごく刺激的だったわ。もちろん、ハイドンの演奏会は未曽有の大成功。 そうそう、知ってる?交響曲『奇蹟』、この名前の由来はね、コンサート会場からシャンデリアが落ちてきたのに怪我人が誰一人いなかった、 ということから呼ばれるようになったの。でもそんなこと普通ありえないじゃない?どうしてだと思う?それはね、あまりにもハイドンが 大人気だったために、一目見ようと前へ前へと観客がつめかけて、会場はオールスタンディング状態。で、後ろの方の客席はがら空き状態。 そこへ、ガシャーン!と落ちたからなの。今でいえば、SMAPばりのスターだったってことね!

せっかくだから何か聴いてみたい?じゃあね、ブタオ・ママが選ぶ『ロンドン・セット』からコレ一曲!んも〜、スゴイ名曲なのよ!!

それは、交響曲第99番の第2楽章。ゲンツィンガー夫人の追悼の思いが込められた楽章で、ハイドン特有のユーモラスな仕掛けが一切ない、 ただひたすらに美しい作品よ。後年、ハイドンはインタビューでこう話していたことがあるわ。作曲の方法について聞かれてね、

“誰かのために曲をつくる、ということは基本的にありません。 ただ一曲だけ、特別な思いを込めてある人に捧げた曲があります”

それがこれなのよ、私は、そう信じてるの。 聴くとね、心がふるえるのよ…

遠くを見つめるブタオ・ママ。彼女(?)の心に何が映っているのか、それはまた別の話。 熱の入るブタオ・ママと常連客たち、そして今宵も更けてゆく・・・ というわけで、ハイドン、その男の素顔編、終了です。

面白い人の音楽はきっと面白い。そんな視点で、ハイドンを聴いてみてください。素敵な大人のエスプリが、ほら、ここにも、あそこにも。

バー・ブタオ(Bar Butao)
この番組は2ndヴァイオリン奏者:篠原英和の監修でお送りします。
★篠原英和(しのはら・ひでかず)通称ブタオさんと呼ばれております。
室内楽のプレトークで活躍中。



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2009-02-12 19:26 この記事だけ表示
 
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