<特別連載>ニコラウス・アーノンクール&ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス伝説 ―音楽の真実へ【第2弾】[公演情報]

 今秋、ついに最後の来日を果たす巨匠アーノンクールとウィーン・コンツェントゥス・ムジクス。彼らの来日公演に向けてこの唯一無二のコンビと、アーノンクールの目指した音楽について皆様に紹介していきたいと思います。
 数回に分けた連載の中では、アーノンクールの貴重なインタビュー画像も登場予定!
ぜひご期待ください!

KAJIMOTO

T.誕生 〜まずは楽器を探す旅へ…



U.アンサンブルの秘密 〜演奏技法へのあくなき挑戦

結成からデビュー・コンサートまで4年もの歳月が・・・
 アーノンクール&ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(CMW)の活動は、“理想主義者”“風変わり”“奇天烈”などと、あらゆる言葉から見て取れるように、まさに“賛否両論”の嵐を巻き起こした。
 と言うのも、CMWが楽壇に現れた1950年代のヨーロッパにおける、バロック・古典音楽の演奏の主流は、まさにロマン的なもので、(ブラームスやワーグナーを演奏するように)それぞれの音符をソステヌートで演奏することが良しとされていた時代だった。そこへ9人の“風変わりな”ウィーン人が現れ、鐘の音のように音を膨らませたり収束させたりと、それまで聴いたことのない“妙な”アーティキュレーションで演奏したのである。彼らは「古楽」や「歴史的な楽器」を対象とした学術体系が全く確立していなかった時代に、まさに手探りでその演奏法を研究し、実践していった。
 余談であるが、アーノンクールは著書の中で、数百年にわたる歴史の中で、楽器や演奏方法がこれだけ変化してきたことにもかかわらず、楽譜の記譜法についてはほとんどと言っていいほど変化がないことを嘆いている。そのためCMWは、独特の記号で楽譜に注釈を入れて演奏したのである。
 従って、CMWの結成から第一回演奏会までの間に4年と言う歳月がかかったことは全く不思議ではないのだ。この4年の間、彼らは古楽の演奏方法をただひたすらに研究し、試していた。“何が正しいか”という規範のない時代、彼らにとって演奏会は生き生きとした「試作活動」の表現の場であったのだ。そして、そのことは演奏会批評でも高く評価されたのである。このようにアーノンクール&CMWは古楽のパイオニアであった。


「休憩だ!」・・・真実を追求するあくなき練習
 彼らのアンサンブルを支える大きな要素は、何と言っても人間関係である。通常のオーケストラでは、弦楽器と管楽器、あるいは金管楽器と木管楽器の間に溝や上下関係が存在するケースが多いが、元々9人の集まりで始めた彼らのアンサンブルには、結成当初から一切の序列が存在しなかった。“音楽のオリジナルな姿”という未知に対峙する緊張感と、あくなき努力によって支えられた集中力。それらを総動員した演奏活動は、全員の合意の上にあるものであった。
 そしていつもその中心にいたのが、アーノンクールだった。彼の練習へのあくなき追求は計り知れず、当時のメンバーに言わせると、彼は必要性を訴えられるまで休憩をほとんど取らなかったという。現代のオーケストラでは、ほとんどのオーケストラが、1時間のリハーサルに対し、10〜15分の休憩を取るというルールが決まっている。ときには、それは指揮者が求める練習時間よりも優位に立つ鉄則(!)なのだ。しかし、彼は違った。一日中練習が続こうと、何時間かかろうと、練習を止めなかったのである。次々と現れる膨大な古楽作品の山に対し、自分たちが使う未知の楽器群でどのようにアプローチしていくべきか、どう仕上げていくべきかを考えると時間はいくらあっても足りなかった。そこで、練習は度々団員からの「休憩だ!」という号令によって止められることとなった。団員はそうしなければ止められないことを分かっていたし、アーノンクール自身もそうしてもらわなければ止まらないことを分かっていたのである。このように、お互いの役割を分かりあっていたからこそ、その間に衝突は起きなかった。
 そう、彼らは音楽的な「家族」というつながりで結ばれていたため、どんなに音楽的な議論が激しくなろうとも、彼らが相対することはなかったのだ。


いかがでしたか?
次回は、いよいよアーノンクール登場です!
巨匠が遂に最後の来日公演へ向けた思いを語ります。


また、アーノンクール最後の来日記念、「アーノンクールと私」というエッセイを大募集!
アーノンクールの音楽と出会って受けた衝撃、影響を与えられたこと、ひいてはあなたの人生がどう変わったか、等々どんなことでも結構ですのでぜひお書き下さい。たくさんのご応募、お待ちしております。⇒詳しくはKAJIMOTOホームページへ!!



2010-09-10 20:05 この記事だけ表示
 
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