オケプラスOPEN記念!在京オーケストラ座談会 その1 〜これからの演奏会のおすすめ、聴きどころ〜[公演情報]

これからの演奏会のおすすめ、聴きどころ

司会(唯野): それぞれのオーケストラの成り立ち、特徴などをご紹介いただき、あらためて個性あふれるオーケストラの魅力を再確認したところです。さて、ここからは、今後の定期演奏会などから、おすすめの公演、聴きどころをご紹介ください。


リスト《ファウスト交響曲》と池辺晋一郎の新作〜読響
ショパン・コンクール優勝のユリアンナ・アヴデーエワ〜N響
スダーン指揮 ブルックナー第8番をセッション録音で再録音〜東響
100周年記念は大野和士が考え抜いたプログラム〜東京フィル
欧州名門へデビュー重ねる29歳ヤクブ・フルシャが披露演奏会〜都響
世界が注目する俊英インキネンの《マーラー撰集》〜日本フィル
ブリュッヘンとのベートーヴェン・プロジェクト〜新日本フィル
現代作品の紹介には、確かな吟味と積み重ねの努力が必要
聴き手がいろいろなチョイスが可能


◆リスト《ファウスト交響曲》と池辺晋一郎の新作〜読響

大久保(読響): まず11月には、常任指揮者のシルヴァン・カンブルランが、創意工夫に溢れた2つのプログラムを振ります。ハイドンとストラヴィンスキーの《火の鳥》を組み合わせたプログラム(第127回芸劇マチネー 11/20東京芸術劇場、第532回名曲 11/21サントリーホール、みなとみらいホリデー名曲 11/23みなとみらいホール)と、ヴィヴィアン・ハーグナーをソリストに迎えてのコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲やシューマンの交響曲第4番のプログラム(第177回芸劇名曲 11/27東京芸術劇場、第498回定期 11/29サントリーホール)です。

 2011年1月は、リスト生誕200年のリスト・イヤーですので、《ファウスト交響曲》をとりあげます(第500回定期演奏会 1/22サントリーホール)。おそらく滅多に生では演奏されない曲だと思います。貴重な機会ですので、ぜひ聴いていただき、みなさんと500回を祝いたい、そんなコンサートです。

 名曲シリーズでは、よく知られた曲目を最高の品質でお届けするのはもちろん、各指揮者の持ち味を出し、世界中から指揮者を呼んでいるので、日本ではあまり聞かれていないけれども、その指揮者の国や地域といったものを反映した、個性のある曲目も入れています。

読売日本交響楽団(読響)のチケット情報

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◆ショパン・コンクール優勝のユリアンナ・アヴデーエワ〜N響

渡辺(N響): 今年ショパン国際ピアノコンクールで優勝したロシアの女流ピアニストのユリアンナ・アヴデーエワを迎えてのA定期(第1688回定期 12/4,5 NHKホール、指揮:シャルル・デュトワ)は、今年の定期公演最後のハイライトになるのではないかと思っています。1965年、第7回優勝者マルタ・アルゲリッチ以来45年ぶりの女性の受賞者ということで注目されていますが、先日、12月から2月までの3ヶ月分のチケットを売り出したところ、ほとんどがこの公演のチケットを買い求めるお客様で、まさか私もここまで話題になるとは思っていませんでした。

法木(読響): それは非常に興味ありますね。

司会(唯野): シリーズの速報に「ソリスト:ショパン国際ピアノコンクール優勝者」とあって、非常におもしろい試みだと思っていたのですが、一方では賭ですよね。

渡辺(N響): 私もちょっと驚くと同時に、1位なしの2位だったらどうするの?と(笑)。いま私はチケット売っている部署にいるもので、お客様になんと説明したらよいのか、お客様の反応が如実にひしひしと伝わってくるものですから、ひとまず、なんとかなってほっとしています。

 1月A定期ではロシア人若手指揮者のワシーリ・ペトレンコがN響初登場です。ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者として、イギリスで高く評価されています。今回演奏するチャイコフスキーの交響曲《マンフレッド》で2009年「グラモフォン賞」を受賞しています。

 また、前半に演奏するベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番では、日本の若手女流ピアニストの小菅優が登場します。(第1691回定期 1/8,9 NHKホール)

 2月にはチョン・ミョンフンを迎え、《幻想交響曲》(第1694回定期 2/5,6 NHKホール)と久しぶりにマーラーの交響曲第3番(第1695回定期 2/11,12 NHKホール)を演奏いたします。お陰さまでたいへんな人気でチケットがどんどん売れています。

NHK交響楽団(N響)のチケット情報

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◆スダーン指揮 ブルックナー第8番をセッション録音で再録音〜東響

高瀬(東響): 11月は音楽監督のユベール・スダーンで、ピアノのダン・タイ・ソンを迎えて、ショパン・イヤーを記念した公演を行います(第583回 定期 11/27 サントリーホール、川崎定期第28回 11/28 ミューザ川崎)。曲はショパンのピアノ協奏曲第2番とブルックナーの交響曲第8番ですが、ブルックナーはセッション録音して、来年CDで発売することになっています。昨年ブルックナーの交響曲第7番をセッション録音してリリースしたところ、第22回ミュージック・ペンクラブ音楽賞クラシック部門録音・録画作品賞(日本人アーティスト)の2部門頂けましたので、8番も頑張りたいと思います。2005年にリリースした同曲と比べるのもおもしろいですね。

12月は常任指揮者の大友直人で、ベリオの《シンフォニア》とR.シュトラウスの交響詩〈英雄の生涯〉(第584回定期 12/5 サントリーホール)、2月にクラウス・ペーター・フロールを迎えて、ハイドンの交響曲第101番〈時計〉、ブルックナーの交響曲第5番というところが、注目していただきたいところです(第586回 定期 2/19 サントリーホール)。

 シーズンのフィナーレとしては、再びスダーンで、リストの交響詩〈オルフェウス〉、フランクの《交響変奏曲》をアレクサンダー・ガヴリリュクのピアノで、ベルリオーズの《テ・デウム》ということで、アフター・シューマンをしめます(第587回 定期 3/26 サントリーホール)。

 常任指揮者の大友直人が20年近く続けている東京芸術劇場シリーズでは先日、エルガーのオラトリオ《生命の光》を日本初演したのですが、来年の2月でシリーズを終了します。ラヴェルのピアノ協奏曲を上原彩子で、そして、パヌフニクの交響曲3番〈祭典交響曲(シンフォニア・サクラ)〉、スタンフォードの交響曲第3番〈アイリッシュ〉という、超知られざる、でもいい作品をご紹介しようという、このシリーズのコンセプトに添ったフィナーレを迎えます(東京芸術劇場シリーズ 第107回 2/25 東京芸術劇場)。

東京交響楽団(東響)のチケット情報

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◆100周年記念は大野和士が考え抜いたプログラム〜東京フィル

三田村(東京フィル): 来年1月の定期演奏会は東京フィル100周年最初の定期になるのですが、桂冠指揮者の大野和士が登場します。「祝祭」をテーマに、大野さん自らこの演奏会をプログラムしていただきました。

 1曲目は東京フィルハーモニー交響楽団100周年記念委嘱作品として、人気現代作曲家の望月京さんの作品が披露されます。もちろん世界初演です。メインはプロコフィエフの交響曲第5番、作品100です。「新しい生命の芽生え」というメッセージが、東京フィルの次の100年への期待として込められています。バーンスタインのセレナードを独奏するのは、ニューヨーク・フィルやボストン響、ロンドン響など世界のトップクラス・オーケストラのソリストとして共演するなど、世界で活躍する実力派の竹澤恭子さんです(第59回東京オペラシティ定期 1/13 東京オペラシティコンサートホール第796回サントリー定期 1/14 サントリーホール第797回オーチャード定期 1/16 Bunkamura オーチャードホール)。

東京フィルハーモニー交響楽団(東京フィル)のチケット情報

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◆欧州名門へデビュー重ねる29歳ヤクブ・フルシャが披露演奏会〜都響

福地(都響): 11月はインバルのブルックナー交響曲第6番が注目です。ブルックナーは5番、8番に続いて、今月末に6番、来春3月には9番、その後2番と続きます。マーラー指揮者、ブルックナー指揮者という言い方で言えば、インバルはマーラー指揮者というイメージが強いかもしれませんが、ブルックナーでも多くの名演をつくってきました。8番では、インバルのこだわりで第1稿(初稿)を使用しましたが、非常に新鮮でスケールの大きな演奏でした。インバルの指揮も精彩で緻密な部分とともに、オーケストラから雄大な流れを引き出す力が素晴らしく、これが「ブルックナーの田園」とも呼ばれる第6番でも聴きどころではないかと思います。ソロ・コンサートマスターの四方恭子が奏でるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番との組み合わせで、艶やかな音楽をご堪能いただけます(第706回定期演奏会 11/29 東京文化会館第707回定期演奏会 11/30 サントリーホール)。

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東京都交響楽団(都響)のチケット情報

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◆世界が注目する俊英インキネンの《マーラー撰集》〜日本フィル

益満(日本フィル): 12月は首席客演指揮者のピエタリ・インキネンがシベリウスの知られざる名曲、組曲《クリスティアン2世》と、マーラー・イヤーということもあり、マーラー撰集第一弾として交響曲第1番を指揮します(第626回定期 12/10,11 サントリーホール)。

 以前、インキネンが来たときに、ダニエル・バレンボイムが杉並公会堂まで練習を見に来たというくらい世界的に注目されている指揮者です。先日、EMIからワーグナー作品集のCDを出したように、非常に明晰な耳をもって大規模なオーケストラを捌いていますので、彼が日本から始めるという初のマーラー演奏が、今後どう展開していくのか非常に楽しみです。本人からはワーグナーをやりたいという声もあったり、もちろんフィンランド人なのでシベリウスも今後なにか集中的にできればいいかなぁと思っています。

 1月は、なるべく若い聴衆層を呼びたいという考えもあり、スティーヴ・ライヒの曲をやることになりました。《管楽器、弦楽器とキーボードのためのヴァリエーション》という20分くらいの曲です(第627回定期 1/28,29 サントリーホール)。指揮のシズオ・Z・クワハラは純粋に日本人なのですが国籍はアメリカという指揮者です。アメリカンプログラムでやろうとなったとき、ガーシュイン、コープランド、バースタイン以外で何かできないかと言うことであがってきたのが、ウィリアム・シューマンとスティーヴ・ライヒでした。後半はアメリカではないのですが、バレエ音楽の《春の祭典》をもってきて、若い指揮者ならではのバリエーション豊かなプログラミングができたと思っています。

 3月には、首席指揮者のアレクサンドル・ラザレフと55周年事業の幕開けとなる香港ツアーに行く関係もあり、そこにもっていく曲として、芥川也寸志《交響管絃楽のための音楽》、矢野玲子のヴァイオリンでストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲、そして、これまで継続的に取り組んでいるプロコフィエフから、ひとまずシンフォニーをお休みして、《ロメオとジュリエット》の抜粋というプログラムです(第628回定期 3/11,12 サントリーホール)。ラザレフとは、この3年間プロコフィエフのチクルスをやっていますが、ロシア音楽のまっとうなところを攻めていこうと思っています。

日本フィルハーモニー交響楽団(日本フィル)

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◆ブリュッヘンとのベートーヴェン・プロジェクト〜新日本フィル

安江(新日本フィル): 定期演奏会のプログラミングの特徴としては、音楽監督のクリスティアン・アルミンクが就任当初から「愛」「人生」など年間テーマを決めて、全プログラムそのテーマで指揮する。そして、客演の指揮者にも趣旨を説明して、そのテーマで組んでもらうということを続けてきました。これはかなりインパクトがあったと思いますが、ヨーロッパでもちょっと評価してもらっています。

 独自性がはっきりするプログラミングだと思いますし、また、現代音楽だけでなくて忘れ去られようとしている音楽まで手を伸ばして、日本の聴衆に紹介したいという取り組みを一貫してやっています。

 1月は音楽監督で、フランクの交響曲とラヴェルの《高雅で感傷的なワルツ》、そして、以前にも競演しているエンダー姉妹というウイーン出身のピアノ・デュオとのプーランクの《2台のピアノと管弦楽のための協奏曲》です(第471回定期 1/26 サントリーホール)。

 2月はフランス・ブリュッヘンとのベートーヴェン・プロジェクト(2/8〜19,21 すみだトリフォニーホール)。一昨年、ハイドン・プロジェクトで、「ロンドン・セット」全曲をやりましたが、今年はベートーヴェン全曲をやりたいと。1月末くらいから日本に滞在するのですが、リハーサルが彼流のかなり特徴的なやり方で、詳しくはWEBを見ていただきたいのですが、いままで何年もつきあってきて、一緒に音楽を作ってきたブリュッヘンと、また一つの音楽的な結実がみられる演奏会になると思います。定期の方はバッハのロ短調ミサも演奏いたします(第473回定期 2/26,27 すみだトリフォニーホール)。

 3月にはダニエル・ハーディングがMusic Partner of NJPというタイトルをもってからは初めての出演になります。《春の祭典》(第475回定期 サントリーホール)とマーラーの交響曲第5番(第474回定期 3/11,12 サントリーホール)という2プログラムになります。

 「新クラシックへの扉」というタイトルがついています名曲シリーズ。これは今年から1プログラムを金曜・土曜日マチネの2公演やることにしたのですが、12月は音楽監督のクリスティアン・アルミンクがバレエ音楽《くるみ割り人形》組曲と、シベリウスのヴァイオリン協奏曲を指揮します(12/3,4 すみだトリフォニーホール)。

 自主公演以外では、新日本フィルとも親しくしているピアニスト、マルタ・アルゲリッチとアルミンクが共演します(11/28,12/1 すみだトリフォニーホール)。

 このほか、4月にはアルミンクの指揮で新国立劇場のオペラ《ばらの騎士》のピットに入ります。これまで年1回セミステージ形式のオペラをやっていますが、2年前にやった《ばらの騎士》は音楽監督のお国物ということもあり、音楽的にもとてもうまくいき印象深かったのですが、その演奏を関係者が聴いていてくださって、それが新国立劇場につながったということです(4/7〜22 新国立劇場)。

新日本フィルハーモニー交響楽団のチケット情報

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◆現代作品の紹介には、確かな吟味と積み重ねの努力が必要

司会(唯野): 都響さんの現代の作曲家シリーズは長く続いているものですが、それ以外でも、新作が取り上げられる機会が最近多いように感じます。東京フィルさんが1月に望月さんの新曲を披露しますが、新日本フィルさんも9月に望月さんをとり上げて、読響さんは1月に池辺さん。現代音楽に対しての聴衆の反応ですとか、実際現場にいらっしゃって、そのあたりはどうお感じですか?

福地(都響): 《日本管弦楽の名曲とその源流》 シリーズの以前から、都響は毎年1月の定期で現代日本の管弦楽作品を取り上げてきた実績があり、他にもサントリー芸術財団の「作曲家の個展」やCD録音などで現代作曲家の作品を数多く演奏してまいりました。古くからのリピーターのお客様の中には、数多くの日本初演を聴いてきたというような、かつての現代音楽フリークのような方までいらっしゃいます。

 都響は、第3代音楽監督だった若杉先生時代の非常にチャレンジングなプログラムを、お客さんがそのまま引き継いできていて、新しいものに対する警戒感が案外少ない部分もあるように思います。聴衆は時間をかけて、良さも分かってくる。1月の公演も、少しずつですがお客さんも増えてきていますので、継続的に取り上げている意味も理解されてきているのかもしれません。またこのシリーズでは、作曲家の別宮貞雄先生にプロデュースをお願いすることで、客観的にも意義深い企画になったと思っています。

 それぞれの楽団さんが工夫されて、普通のプログラムに1曲だけ現代物入れたり、組み合わせを工夫されていますよね。最初は警戒感があったりすると思いますし、もう懲り懲りだと思って二度と来ないという心配もあり、多少苦労すると思うのですが、うまくそういうのを育てていけばという気持ちはあります。

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◆聴き手がいろいろなチョイスが可能

司会(唯野): こうしていろいろなお話をうかがっていると、私たちの身近にあるオーケストラが、それぞれに工夫し、魅力ある公演を数多く提供していることがよくわかります。日頃なかなか聴けない作品や、これから世界に羽ばたく若い才能など、注目すべき公演も多いですね。

安江(新日本フィル): 東京だといろいろなチョイスが可能じゃないですか。同じ日にぶつかってしまうコンサートもありますが、お客様の立場からすると、あるいはちょっと興味持っている人からすると、これだけ選べる場所にいる人たちって本当にうらやましい。

 私は名古屋出身で、しかも実家は中心部から離れているので、クラシックのコンサートに行こうと思っても簡単に行けないし、あったとしてもやはり良い物が集中してくるという環境ではなかった。だから、ちょっと僕にとってはうらやましいな。東京や近郊に住んでいる人たちがうらやましいなと思うのは、ちょっと調べてちょっとその気になれば、手が届く場所にそういう物がある。お客様にもそういうチャンスが毎日あることを知ってもらえたらなと思います。

法木(読響): クラシック音楽の演奏会って、その場にいてその瞬間しか共有できない、一瞬で過ぎ去っていく刹那みたいなのを味わうのが醍醐味かなと感じているんです。同じ〈新世界〉という曲を何回も聴いても、指揮者によっても違うし、ホールによっても違う、聴くお客さんの状態によっても、会場の雰囲気によっても聞こえ方が違う。そういう楽しみ方、味わい方があるんですよ、ということを知っていただけたらと思います。

司会(唯野): そうですね。ぜひ在京オケの演奏会のなかから気に入った公演をみつけていただき、そういったクラシック音楽ならではの楽しみ方も感じていただけたらと思います。

(次回に続く)


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2010-11-22 19:29 この記事だけ表示
 
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