「メトロポリタン・オペラ」驚異のコロラトゥーラ・ソプラノ ディアナ・ダムラウへ電話インタビュー![公演情報]

――ご出産、おめでとうございます!

 ありがとうございます!可愛い男の子が無事生まれました。
 今は、とにかく息子こそが一番素晴らしい私の作品、という気持ちで、とても幸せです。

――妊娠中もオペラに出演なさっていらっしゃいましたが、妊娠しているときと、普段と歌い方に何か違いはありましたか?

 そうですね、妊娠中は勿論動きは、少々大変でしたから、まあ、当たり前のことですが。でも歌い方には何も違いがありませんでした。おなかの中の赤ちゃんは、いつもいい子にしてくれていて、私のすることをちゃんと一緒にしてくれました。だから、幸いなことに何の問題もありませんでした。

――ご出産後も、あまり日をおかずにオペラに出演なさると聞きましたが。

 来年の1月からまた歌う予定です。私にとって歌うことはとても楽しいのですが、スポーツと同じで、ちゃんとしたそれなりの身体で、フレキシブルに対応できるようでなければなりません。妊娠から出産と身体のホルモンの状態も変わり、声の状態も少し変わってきました。私は自分の声の中音域、低音、そして高音も、以前より丸くなったと感じています。そう、声が全体的により暖かく、丸くなったと思います。

――来年6月METと来日するまでのおおまかなご予定を教えてくださいますか。

 はい、1月にまず「清教徒」です。1月はリハーサルで公演は2月ですが、「清教徒」のエルヴィーラを歌います。それから3月にはMETで新しいプロダクションの「オリー伯爵」を歌います。その後、「ランメルモールのルチア」をスペインのビルバオで歌います。その後、METの素晴らしいプロダクションで日本に行きルチアを歌います。

――METには、3月に新演出「オリー伯爵 Le Comte ORY」で出演なさるなど、強い絆を感じます。2005年MET」にツェルビネッタ役でデビューすることが決まったときの気持ちをお聞かせてください。

 まず、ツェルビネッタの役は、ルチアの狂乱のシーンと同様に、約15分間ほど舞台で全く一人で演じ歌わなければなりません。とてもヴィルトゥオーゾな役で、うまく行くかどうかは、その役を歌う女性歌手の責任にかかっています。そのような役を、METという大きなオペラハウスで、伝統のある舞台で、たくさんのオペラに造詣の深い聴衆の前で歌うということは、まず、大変に緊張しました。勿論すごく緊張しましたよ!(笑い)。しかし、どんなに大きなオペラハウスであろうが、たった一人の聴衆のためでも、また私自身のだめだけに歌うときも、私はできるだけ美しく歌うように努力します。しかし、きれいに歌うだけではなく、オペラの作品を解釈して表現すること、ストーリーを語り、その登場人物の役を感じ取り、私の表現でその名作の素晴らしさを伝える喜びがあります。それが全てうまく行ったときは本当に嬉しく、どれだけ多くの聴衆の前であろうがなかろうが、同じ気持ちです。

――METで歌うことは、あなたにとってどのような歌劇場ですか?
ヨーロッパの歌劇場との違いなどありましたら、教えてください。

 まず、METは非常に大きなオペラハウスで、客席数も約4千席もあり、これだけの大きさのオペラハウスはヨーロッパにはまずないでしょう。しかし、実際に舞台で声を出して見ると、客席の皆に良く聞こえることが分かりますし、ここで歌うことへの自信がもてます。サイズの大きさは、ヨーロッパと違いますが、劇場のスタッフもまた歌手陣も、皆とても親切ですから、コヴェントガーデンや、ウィーン国立歌劇場やスペインのオペラハウスなどで歌うことと、変わりはありません。どこの歌劇場もみな、とてもよくオーガナイズされています。どこでも、その劇場に到着したら、すぐに最高の状態の中で仕事が始められます。それは、歌手にとって大事なことです。そうして、その舞台で歌うことに大きな喜びが感じられるのです。

――今回のMETとの来日では《ルチア》を歌われるわけですが、ルチアの人間像をどのように捕らえて演じられますか?
この役の難しさ、楽しさといったものはどのようなところにあるのでしょうか?
またどのようなところに注目して欲しいですか?

 私は「ルチア」を歌うにあたり、かなり自分なりに準備をしました。というのも、私はそれ以前にこのような“狂乱のシーン”のある役を歌ったことがなかったからです。そして物凄いヴィルトゥオーゾな役で19世紀の偉大なオペラ作品ですから。歌手として、自分の声の多くの可能性を披露できる役でもあります。作曲家自身、実際にそのように作曲していると思います。ドニゼッティは、カデンツァに、また音楽そのものに、歌手に多くの自由を与えています。歌手のそれぞれの声にあわせて、最も美しく表現できるように歌う自由です。ルチアはコロラトゥーラですが、必ず何かを表現しているので、単なるヴィルトゥオーゾなテクニックだけではありません。必ず何かの特別な気持ちと結びついています。この気持ちですが、これはルチアの性格に関係しています。ルチアは健康ではないのです。彼女は狂乱するわけですから、私はこのような性格をまず理解したいと思いました。そして、精神科のあるドクターとこのテーマについて話し合いました。ルチアの場合を先生にお話しましたが、私が予想していたように、彼女は最初から“狂乱”する病気の要因、つまり“両極端な性格”であったという結論に私達は至りました。両極端な性格とは、気持ちが高まると、それはヒステリックなほどの喜びまでに高まり、しかし、落ち込むとどん底まで沈んでしまうという性格です。これが1幕の最初のアリア「静かなる夜(あたりは沈黙にとざされ)」、泉にまつわる昔話を語り彼女の見える亡霊について話すシーンに出ています。そしてエドガルドへの愛がつのり、彼と暮らしたい、ひそかに結婚したいという望みが高まっていき「この上なく燃える恋に」と高まってきます。当時の女性は、自分の力だけではどうにもならず、その生活は男性の力により導かれていた時代です。エンリーコとノルマンノは、このかわいそうなルチアを政略結婚させようとしているのです。彼女の気持ちや望みは、誰にも興味を持たれず、単なる操り人形のようです。彼女は社会の、男性社会の犠牲者です。彼女には次々と圧力がかけられます。まず、エドガルドからの偽りの手紙で欺かれ、彼にはもう別の女性がいるといわれ、信頼していたライモンドからは、お家のため兄のため亡くなった母のために、結婚しなければならないといわれます。
 そして、突然にエドガルドが現れ、ルチアの不実をなじられ、天国と神を冒涜したといわれます。信仰は彼女にとって大切な要素でした。エドガルドだけを愛し、他の誰とも結婚できないと、エドガルドとの神聖な結婚を望んでいたルチアには、彼のその冷たい怒りの態度は大きなショックでした。それで、新しい結婚相手を殺害し、狂気となるわけです。そのように全てが複雑に絡み合っています。私は、まずルチアのことを理解したく、精神科の医師と話し合いをしたのです。勿論私の声で、この音楽を表現しなければならないわけですが、どのカデンツァを歌い、どういう気持ちで歌うかは、まずこの役の性格を理解することが大切でした。

――この役はMETですでにお歌いになってますよね?

 ええ、丁度ネトレプコが出産をひかえてキャンセルしたときに、METからこの役を代わりに歌わないかと提案がありました。そのときは、他の仕事をいろいろキャンセルして、METでこの役でのデビューに望みました。本当に素晴らしい体験でした。この役を今度METの日本公演で歌えることは、私にとって、とても大きな喜びです。

――日本には、オペラで来日するのは初めてですね?
日本のファンが、今か今かと待ち望んでいますが、日本のファンにメッセージをお願いします。

 以前にメータ指揮でマーラーを東京のサントリーホールで歌ったことがあります。
今回は、オペラを日本で歌えることをとても嬉しく思っています。日本は古い文化のある素晴らしい国で、その文化に触れて、たくさんのオペラファンの皆様にお会いできることを、今からとても楽しみにしています。

――最後の質問です。ダムラウさんの心の一曲。原点に立ち戻れる作品は何でしょうか?

 難しい質問ですね。今歌っているオペラ、曲が一番好き、といつも思っていますが。
 しかし、私個人としては、「ランメルモールのルチア」と「椿姫」が一番大切なオペラです。特に「椿姫」は私の原点ともいえます。私がオペラを好きになるきっかけとなった作品です。というのは、私が12歳のときにテレビでゼッフィレッリの映画を「椿姫」見たのです。ドミンゴ主演の映画でしたが、見終わった後に感動して泣きました。これこそ世界で一番素晴らしいオペラだと思いました。そして、神様に毎日祈ったのです、「私もいつかあのように歌えるようになりたい!」と。幸いなことに、私の才能が足りて、歌うことができるようになりました。しかし、私たちの職業は、常に練習し勉強しなければなりません。身体に気をつけてよいコンディションを保たなければなりません。これからも、できるだけ長くこの喜びを続けていきたいと思っています。でも、神様からの最高の贈り物、神様の最高傑作は、なんといっても“子供”です!

――息子さんのお名前を伺ってもよろしいですか?

 アレキサンダーです。

――素晴らしい偉大なお名前ですね。もう一度アレキサンダーさんの御誕生、心よりお喜び申し上げます。来年の6月、METと来日されることを心よりお待ちしています。




2011-02-10 19:05 この記事だけ表示
 
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