世界初演の待望の新作、ビントレー版『パゴダの王子』リハーサル・レポート[公演情報]

 来る10月30日に初日を迎える、新国立劇場バレエ団の新作『パゴダの王子』(音楽:ベンジャミン・ブリテン)のリハーサルを見学した。創作現場で、何かが生み出される光景には、いつも胸が高まる。
 広いスタジオに、ピアノが奏でるタンゴのリズムが響く。場面は、第三幕の退廃的な宮廷のシーン。悪魔のような女王エピーヌが、四つの王国の王を相手に、欲に溺れて、踊り乱れる様子が描かれる。初日キャストの女王エピーヌ、湯川麻美子を中心に、上手に本島美和、下手に川村真樹のグループが3キャスト合同で、振付を進めていた。
 振付は、芸術監督のデヴィッド・ビントレー。彼は、ほとんど初日キャストにしか指示を出さない。本島組、川村組は、湯川組の指導を、横で見ながら覚えてゆく。監督補の大原永子と二人のアシスタントが、ビントレーをサポートしていた。

 いわゆる古典バレエの動きにはない、身体の重心の移動や動きのつながりが多い。四人の男性を相手に、一人の女性が絡むように踊る。女性が男性の肩に足を乗せて、身体を反らせながら回転するというタンゴ的な動き。身体を密接させて動く部分では、可動空間に余裕がなく、女性が思うように動けない。五人の動きのコンビネーションがかなり複雑だ。

 ビントレーは、何度も何度も同じ箇所を確認しながら、かなり細かく男性のサポートの仕方、決まった身体の方向、ポジションをダンサーたちに要求し、そして、必死にダンサー達もそれに答えようとする姿が強く心に残った。また、休憩中も音楽を聴きながら、ビントレーは、ずっと動きながら、振りを確認していた。あと、一ヶ月余りで、この作品がどう仕上がってゆくのか、ますます期待が高まる。

 湯川、本島、川村は、三者三様に悪女エピーヌを楽しんでいるようだった。湯川は、黒鳥オディール、本島は、感情を内に秘めたガムザッティ、川村は冷たいミルタのようなイメージ。主演も務める福岡雄大、菅野英男は四つの王国の王も演じ、新国立バレエ団のダンサー達がその持ちうるもの全ての力を結集して、作品に挑んでいる。彼らは、まさに、ビントレーとの冒険旅行の真っ只中にいる。

(文/池田愛子)
(写真/渡辺マコト)

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2011-09-22 11:27 この記事だけ表示
 
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