ヘンゲルブロックの時代が来る!トーマス・ヘンゲルブロック指揮、ハンブルク北ドイツ放送交響楽団[公演情報]

 今、ヨーロッパでは“ヘンゲルブロック旋風”が巻き起こっている。“新時代到来”を予感させる指揮者トーマス・ヘンゲルブロックと名門オーケストラ、ハンブルク北ドイツ放送交響楽団(以下、北ドイツ放送響)とのコンビによる初の日本公演は、2012年、日本のクラシック音楽界最大の話題となるに違いない。

 一部のコアなファンを除いて、多くの方がトーマス・ヘンゲルブロックって誰?と思われるだろう。それもそのはず。1958年生まれのヘンゲルブロックは、古楽界の巨匠ニコラウス・アーノンクール率いるウィーン・コンツェントゥス・ムジクスのヴァイオリニストを経て、85年、フライブルク・バロック・オーケストラの設立に関わり、指揮活動を始め、95年、ドイツ・カンマーフィルの初代芸術監督(現在の芸術監督はパーヴォ・ヤルヴィ)に就任、その間も、専ら古楽作品の分野を中心に活動を続けてきた、古楽界のエキスパート。モダンなオーケストラで古典派、ロマン派以降の作品を指揮するようになったのはここ数年間のことだ。
 95年には同時に、音楽と演劇、舞踊など他の芸術との融合を実現すべく、バルタザール=ノイマン・アンサンブルを設立、そこでは古楽のみならず現代の作品までも演奏するなど活動の幅を拡げ、2000年にはウィーン・フォルクスオーパーの音楽監督も務めるなど、国際的にも注目を集めた。それでもヘンゲルブロックの活動はそれまでのものと一貫して変わらず古楽中心であり続けた。
 しかし、バイエルン放送響やミュンヘン・フィルなどに登場するや、古楽の世界で培ってきた豊かな音楽性に裏打ちされた、これまでにない新鮮な演奏スタイルが高く評価され、多くのファンを生み出し、たちまち風雲児となった。そのことは、2011-12年シーズンからの北ドイツ放送響首席指揮者就任に留まらず、同じく2011年バイロイト音楽祭での《タンホイザー》指揮という大抜擢(古楽界出身の指揮者としては初の快挙)とその大成功が全てを物語っている。

 北ドイツ放送響は、20世紀を代表する巨匠ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが指揮台に立ち、ハンス・クナッパーツブッシュ、エーリヒ・クライバー、オットー・クレンペラー、カール・ベームといった錚々たる指揮者が客演、ギュンター・ヴァントが首席指揮者の時代には、国際的にも高く評価され一世を風靡したドイツの名門オーケストラ。
 ヘンゲルブロックが昨年9月、北ドイツ放送響の首席指揮者就任披露公演で選んだ曲は、今回の日本公演でも披露するベートーヴェンの交響曲第3番〈英雄〉。筆者はその公演を幸いにもインターネットラジオで聴き、後日映像でも確認することができた。指揮棒を持たず、必要最小限の動きでコントロールしながら、楽しそうに指揮するその姿が印象的だった。ホルン、トランペット、ティンパニなどに古い時代の楽器を取り入れ、弦はビブラートを少し抑え、比較的速めのテンポでアクセントを強くするなど、古楽奏法(ピリオド奏法)を取り入れながらの演奏は、渋く重厚な響きが特徴的だった北ドイツ放送響に、軽快で透明度の増した響をプラス、これまで聴いたことがないその新鮮な音楽と面白い化学変化に瞠目した。

 今回の日本公演のプログラムは、ブラームスの交響曲第1番をメインに、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、モーツァルト《フィガロの結婚》序曲。ブラームスはハンブルク出身の作曲家で北ドイツ放送響にとって最も大事な作曲家のひとりであるばかりでなく、設立当初、フルトヴェングラーが指揮した記念碑的作品(録音も残っている)。ヴァイオリン協奏曲のソリストは、ドイツの誇る現代最高のヴァイオリニストのひとり、クリスティアン・テツラフ(大阪公演は竹澤恭子)。
 首席指揮者就任後、初来日で選んだプログラムは“超”のつく名曲ばかり。そこにヘンゲルブロックと北ドイツ放送響の揺るぎない自信を感じるが、ヘンゲルブロックには、ギュンター・ヴァントが築いた黄金期に次ぐ、新たな黄金期創造の担い手としての期待が高まる。

(文:唯野正彦)


公演概要

ハンブルク北ドイツ 放送交響楽団


■大阪公演

5/27(日) ザ・シンフォニーホール(大阪府)
<出演>
指揮:トーマス・ヘンゲルブロック
ヴァイオリン:竹澤恭子
管弦楽:ハンブルク北ドイツ放送交響楽団
<曲目>
モーツァルト:オペラ「フィガロの結婚」 序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 op.68
<発売日程>
一般発売:発売中


■東京公演

5/29(火) サントリーホール(東京都)
<出演>
指揮:トーマス・ヘンゲルブロック
ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ
<曲目>
モーツァルト:オペラ「フィガロの結婚」 序曲
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
(ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ)
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 op.68
<発売日程>
座席選択先行:発売中〜1/17(火)
一般発売:1/21(土)〜



2012-01-12 15:18 この記事だけ表示
 
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