<特別追悼公演>ピナ・バウシュ トリビュート、国際的ミュージシャン・三宅純に公演への思いを聞いた![インタビュー]

 2009年に惜しまれつつ世を去った不世出の振付家ピナ・バウシュ。その命日である6月30日に、ピナ作品の映像上映と、ピナの舞台音楽を担当し晩年の彼女と交流のあった国際的ミュージシャン・三宅純を中心としたライブ演奏による追悼公演が行われる。2005年以降パリを拠点に活動する三宅の一時帰国中に公演へ期する思いを聞いた。

 “異種交配”によって創意豊かなサウンドを世に放つ三宅とピナとの出会いは2004年。ヴッパタール舞踊団から三宅の既成曲を使いたいという照会が入る。それを機に楽曲提供が始まり、毎年公演のためパリを訪れるピナやダンサーたちと夜な夜な語り明かすようになった。自身のアルバムのための制作曲が世に出る以前に舞台に用いられるようになり、「フルムーン」(2006年)ではピナ作品初となるサウンドトラックをプロデュース。温厚にして厳粛な性格で知られたピナがカフェでタバコとグラスを手にサッカーW杯のテレビ中継に見入って興奮する!というチャーミングなシーンが印象に残っているという。

 「ピナのカンパニーには、ありとあらゆる国籍・年代層の人が所属し、共存あるいは拮抗しながら作品を生み出していく。といっても個性を失うわけではなく個が個に還っていくことによって、ひとつの世界観が出る。ピナの作品に出会う前から僕の音楽はそれと同じ手法を用いていました。」

 ピナの突然の死は衝撃であり、もはやパリにいる意味がないと落ち込んだ時期もあるという。が、ピナの死後撮影され楽曲提供したヴィム・ヴェンダース監督の「PINA/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」(2011年)に接しピナの死への受け止め方に変化が訪れる。

 「死ぬということは消滅することではなく強烈に不在することだな、と。ピナは十分大きな存在だったけれども、亡くなったことで、さらに大きくなったと感じます。」

ピナ没後3年に際し行われる今回の追悼ステージへの抱負を次のように述べる。

「ピナの命日であること、新宿文化センターという彼女が日本でずっと公演をしてきた場所で行うということなので、ぜひ協力したいと思った。ピナの舞台や映画「PINA」の使用楽曲も入りますが、僕個人としてピナに捧げる音楽、捧げものとして捉えていただければ。」

「フルムーン」などの劇中使用楽曲に加え今回のために書き下ろす曲もあるという。映画「PINA」の予告編にも使われた名曲「Lilies of the Valley」はもちろん演奏予定。映画のエンドロールに流れた「tHe heRe aNd afTer」は映画同様アメリカ人女性歌手リサ・パピノーが歌う。三宅の信頼厚いブルガリア・コスミック・ヴォイセズ合唱団も出演する。

「リサは非常に個性的な声の持ち主。難病を抱える境遇ながら果敢にツアーを行い制作も続ける気丈な人です。ピナとも接点がありました。ブルガリアン・ヴォイスには、追悼ということを考えたとき、彼女たちの声が入ることによってスピリチュアルな面が出せるのではないかと思い参加してもらいます。アカペラで伝統的な曲を歌うのではなく、ハイブリッドな使い方をしてピナのように異種交配な感じを出せれば。」

ピナを愛してやまなかった人にとってもピナの死後に彼女の存在を知った人にとっても見逃せない、聴き逃せないイベントになるだろう。三宅は決意をこう語ってくれた。

「映画「PINA」を観たとき、二度と観ることができないピナの新作を観たような気がしました。今回のコンサートが二度と作られる事の無いピナの新作、その架空のサントラのようなコンサートが出来たらよいなと思っています。」


〔取材・文/高橋森彦(舞踊評論家)〕
〔インタビュー写真/坂野則幸〕


公演概要

<特別追悼公演>ピナ・バウシュ トリビュート
映像と音楽で綴る 舞踊家ピナ・バウシュの軌跡


<公演日時・会場>
6/30(土) 新宿文化センター 大ホール (東京都)
【第一部】ピナ・バウシュ作品の映像上映
【第二部】トリビュートコンサート

<演奏予定曲目>
■「Lilies of the valley」 (映画「PINA ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」メインテーマ楽曲、ピナ・バウシュ
ヴッパタール舞踊団「VOLLMOND」劇中使用楽曲)
■「tHe heRe aNd afTer」 (映画「PINA ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」エンドロール使用楽曲、ピナ・バウシュ
ヴッパタール舞踊団「SWEET MAMBO」劇中使用楽曲)

<出演>

(写真左)リサ・パピノー(Photoby Betsy Kenyon & Melanie Willhide)
(写真右)ブルガリア・コスミック・ヴォイセズ合唱団(Photo by Vassilka Balevska)

三宅 純(トランペット、ピアノ他)、
リサ・パピノー(ヴォーカル)、
ブルガリア・コスミック・ヴォイセズ合唱団(ポリフォニー女声合唱)、
落合徹也ストリングス(落合徹也(ヴァイオリン)、
藤田弥生(ヴァイオリン)、カメルーン真希(ヴィオラ)
村中俊之(チェロ))、バカボン鈴木 (ベース)
伊丹雅博(ギター、ウード)、yoshie*(パーカッション、ドラム) 他


上映はピナ・バウシュ演出・振付の作品となりますが、作品名は後日正式発表となります。(※作品によってはピナ・バウシュ自身の出演がない映像の場合もございます。あらかじめご了承下さい。)



2012-04-20 20:23 この記事だけ表示