名匠が紡ぐ、未来への響き ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団公演[公演情報]

100年を超えて磨き上げられた、ドイツ伝統の重厚かつ光沢ある響きを誇るミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団が来年4月、全国4カ所で来日公演を開く。率いるは、この秋音楽監督に就任した名匠ロリン・マゼール。ロシア音楽を含む多彩なレパートリーで、未来へ向けての新たな響きを紡ぐ老舗楽団の今について、ウィーン在住の音楽評論家、野村三郎さんに寄稿してもらった。


高め合い、さらなる飛躍
音楽評論家・野村三郎さん

 2012年9月6日。音楽監督に就任したばかりのロリン・マゼールとミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団による公演が、本拠地のガスタイクで開かれた。初日はマーラーの交響曲第9番。翌日はワーグナーの「タンホイザー」序曲に「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死、ブルックナーの交響曲第3番である。
 いずれもミュンヘン・フィルにとっては十八番といえる重厚な演目。マゼールは、やや遅めのテンポながら、まったく揺るぎなくスケールの大きな音楽を導いてゆく。オーケストラも、微細なフレーズに至るまで巨匠の棒にこたえ、色彩豊かな表情を紡ぎ出していた。ワーグナーでは、最弱音をすばらしく繊細に奏でたチェロを筆頭に、このオーケストラが、並々ならぬ技量の持ち主の集まりであることを存分に証明した。
 マゼールは、オーケストラに任せるところは任せ、自らは「監督」として全体を見渡し、構築するタイプの指揮者だ。こうしたドイツ系の曲においては、そうした特徴が顕著に現れる。オーケストラの自主性を重んじるため、オーケストラの方向性や持ち味もくっきり見えてくる。双方の信頼が実を結ぶのに、そう時間はかからないであろう。
 何といってもミュンヘン・フィルは、チェリビダッケと長い蜜月を過ごし、ブルックナーの比類ない響きをわがものにしている希少なオーケストラである。彼らの伝統と自主性を尊重したい、というマゼールの姿勢は十分理解できる。
 前任のティーレマンから託された一番の課題は、レパートリーの拡大だ。レスピーギの「ローマの噴水」は、そういう新しい挑戦のひとつといえよう。来日公演の多彩なプログラムも、マゼールの所信表明といったところかもしれない。
 マゼールは82歳の現在も極めて壮健。大またで舞台を横切って指揮台に立つと、大きな身ぶりでオーケストラをぐいぐいと自分の音楽に引き入れていく。
 ウィーン国立歌劇場総監督になったとき、彼は同じ演目を同じ歌手に歌わせ、その回数を積み重ねることによって、演奏水準の底上げを狙った。この試みは劇場側との摩擦を生み、結果として2年で退陣せざるを得なくなったが、のちにウィーン国立歌劇場はこの方針を採り入れたという。
 そうした向上心は、もちろん彼の音楽作りにも顕著に現れる。団員によると今回、練習と本番とでテンポが違い、面食らった箇所があるという。そうしたサプライズが、団員たちにある種の緊張感を与えているのは疑いない。そのくらいでひるむようなら、一流とはいえない。何よりミュンヘン・フィルは、こうした要求に即座に対応する能力と若さを十分に持っている。
 マゼールのような百戦錬磨かつ老獪(ろうかい)な巨匠に我が身をゆだねることによって、ミュンヘン・フィルはさらなる飛躍を目指そうとしている。マゼール自身も、オーケストラとともに歩む未来をしかと見据えているに違いない。

2012年11月30日 朝日新聞大阪本社版紙面より


公演概要

【名古屋公演】スーパークラシックコンサート2012-2013

2013/4/12(金) 愛知県芸術劇場コンサートホール
<出演>
五嶋龍(ヴァイオリン)
<曲目>
レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調
(ヴァイオリン独奏:五嶋龍)
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 作品92

【東京公演】ロリン・マゼール指揮 日本公演2013 東京公演

2013/4/13(土)〜4/18(木)サントリーホール 大ホール
<出演>
五嶋龍(ヴァイオリン)※4/17のみ
<曲目>
2013/4/13(土)
ベートーヴェン:序曲「コリオラン」
ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調 作品60
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 作品92

2013/4/17(水)
チャイコフスキー:幻想序曲「ロメオとジュリエット」
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調
(ヴァイオリン独奏:五嶋龍)
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

2013/4/18(木)
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲
〜ヴェヌスベルクの音楽(パリ版)
楽劇「トリスタンとイゾルデより 前奏曲と愛の死
ブルックナー:交響曲第3番二短調(1889年第3稿 ノーヴァク版)

【札幌公演】ロリン・マゼール指揮

2013/4/14(日) 札幌コンサートホールKitara大ホール
<出演>
五嶋龍(ヴァイオリン)
<曲目>
レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」
パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調
(ヴァイオリン独奏:五嶋龍)
ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調 作品92

【大阪公演】第51回大阪国際フェスティバル

2013/4/16(火) フェスティバルホール
<曲目>
ワーグナー:歌劇「タンホイザー」序曲
〜ヴェヌスベルクの音楽(パリ版)
楽劇「トリスタンとイゾルデより 前奏曲と愛の死
ブルックナー:交響曲第3番二短調(1889年第3稿 ノーヴァク版)

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2013-01-08 10:53 この記事だけ表示
 
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