水戸室内管弦楽団 東京公演:指揮者 準・メルクル氏、ピアニスト:小菅優さんのインタビュー、そして作曲家:細川俊夫氏が語る作品〈開花II〉をご紹介![インタビュー]

2013年7月8日(月) サントリーホール 大ホールで行われる水戸室内管弦楽団 東京公演を目前に控え、指揮者 準・メルクル氏インタビューと、作曲家:細川俊夫氏が〈開花II〉について語ったコメント、そしてピアニスト:小菅優さんインタビューをご紹介します!

▼指揮者:準・メルクル氏インタビュー!
▼作曲家:細川俊夫氏〈開花II〉について語る!
▼小菅優さんインタビュー!


指揮者:準・メルクル氏インタビュー!

メルクルさんは、<月夜の蓮>の世界初演(北ドイツ放送交響楽団、2006年)などをはじめ、これまで細川俊夫さんの作品を数多く指揮されています。そして、今回は<Blossoming II>の日本初演となります。細川俊夫作品の魅力をお教えください。

 細川さんの作品は、伝統的なヨーロッパのオーケストラのスタイルを用いて、日本的な感覚や思考の探求を行っており、とても魅力的です。そして、彼は、たとえば風鈴のような、幾つかの伝統的な日本の音具を細心の注意を払いながら、オーケストラの中に導入しています。
 彼の音楽の際立った特徴のひとつは、音が鳴っている状態と無音の状態との境界、いわば「静寂」の探求にあります。彼のすべての作品が、この領域から始まり、そして終結しています。


今回ピアノ独奏者を務める小菅優さんとは、フランス国立リヨン管弦楽団(2011年)で共演されていますね。小菅優さんとの共演で何かご記憶に残っていることがありますか?また、今回の彼女との共演について、コメントをお願いします。

 小菅優さんは、日本の最も才能あるピアニストの1人です。そして、彼女は多くの作品で、実にユニークなアプローチを行っています。それは、精巧で卓越した技巧を持つと同時に、激しさや情熱に満ち溢れたものであります。
 彼女とベートーヴェン作品を一緒に演奏するのは今回が初めてなのですが、彼女は、私たちに、この偉大な作品の意味深く説得力のある解釈を提示してくれるであろうと確信しています。


今回のシューベルトの「交響曲 第8番 D944<グレイト>」の演奏は、「挑戦」であるとマエストロはおっしゃっていました。そのことについて、お話しいただけますか?

シューベルト以降の世代が、この交響曲をベートーヴェンの〈交響曲 第9番〉と一対に捉えて、「グレイト」と呼んでいるので、私たちはこの作品を大規模なオーケストラで演奏するものだという考えと常に結びつけてしまっています。そして、20世紀には、そのような演奏がいつでも行われてきました。16人か18人の第1ヴァイオリン、そして総勢で最低でも60人を越える弦楽器奏者、そして管楽器は木管楽器に加えホルンまで2倍の人数に増やされています。
 しかし、音楽構造や美学的な点で、例えばブルックナーなどよりはベートーヴェンと親近性があるという意味で、この作品の音楽書法はとても古典的であると言えます。私たちが、今回挑戦しようとしているのは、この本質に立ち戻るということです。人数を倍増させずに、シューベルトが作曲時に想定していた小編成の弦楽器と管楽器から成るオーケストラの枠内で、本来のバランスを取り戻すということです。もちろん、交響楽的な規模の大きさは保持しながらも、その一方で、この「オリジナル」なアプローチによって、より多くの細部が浮き彫りにされ、より良い音楽構造の理解が得られることを、私は確信しています。私たちは、シューベルトの交響曲の新しい探求の道の途上にいるのです。


最後に、聴衆に向けてメッセージをお願いします。

長年にわたって、私は水戸と茨城の皆様の前で演奏することに大きな幸せを感じてきました。どれほど多くの意識を皆さまが音楽に向けてくださったか、どれほど多くの若い人たちがコンサートに来てくださったか、それを見つめることが、私の大きな喜びです。この水戸での体験は、音楽を通して私たちはよりよい世界を創出することができ、困難な時にも音楽が勇気を与えられるのだ、という私の希望を強固なものにしてくれています。これからも、皆さまの素晴らしい街に、音楽の力が、光となって輝き続けますよう、心より願っております。


作曲家:細川俊夫氏〈開花II〉について語る!

 この作品は、エディンバラ芸術祭の委嘱作品で、スコットランド室内管弦楽団の 指揮者、Robin Ticciatiのために作曲しました。ロビンには,ベルリンフィルのロンドン公演のとき,私の『ホルン協奏曲、開花の時』のイギリス初演の際に、サイモン・ラトルから紹介されました。その時の『開花の時』をロビンがたいへん感動してくれて、この委嘱作品を頼まれることになりました。

 私には,いくつかの『花』をテーマにした作品があります。日本人は,着物に花の絵を描いて,それに身を包みます。そうすることによって、花の持っている宇宙的な力を身体に身につけようとするのです。それと同じように、私は、音楽で花の持っている力を想像し、それを歌うこと、聴くことによって、花の持っている宇宙的な力を、人間の生きる力に変換していきたいのです。花が『開花』に向かって、全エネルギーを集中させます。それは静かな目覚めの時なのですが、私には極めてダイナミックな音楽的なうたが、そこに生まれているように感じられるのです。

 さらに私には,明治の初めに夏目漱石が『私の個人主義』という講演のなかで書いている、日本の文明開化は西洋のものを取り入ることに必死になり,内からの開花を持っておらず,外から強制された上滑りな開花でしかない、という批判をいつも心に留めていました。明治から150年以上も時を経た現在もまた、その上滑りな開花は変わっていないのではないか。それでは、どうすれば日本人が日本人という歴史の土壌に根を張った「内から開花する」音楽を生み出すことが出来るのか、という問題を私はいつも考えて、作曲の仕事をしています。
 この〈開花II〉は2007年に東京クヮルテットの委嘱で作曲した弦楽四重奏曲〈開花〉をベースとして、それを自由に室内オーケストラへ書き換えていきました。

水戸室内管弦楽団は、小澤征爾さんの指揮、児玉桃さんのピアノでピアノ協奏曲〈月夜の蓮〉を素晴らしく日本初演(2006年)していただき,さらにヨーロッパ公演(2008年)でも何度も演奏していただきました。その作品もまた『蓮の開花』をテーマにしたものです。準・メルクルさんは、今、私の音楽の最も信頼する理解者であり、世界中のオーケストラで素晴らしい演奏をしてくれている指揮者です。その彼の指揮のもと、どのような音楽の花が、水戸で開花するか、とても楽しみにしています。

 作品は、最初に響く長い一つの音を、水面の響きと捉えてください。そしてその音より下は水面下であり、さらに低音は泥の中です。その音より上の音は、空の空間。光や風を含んだ空の響きです。そして音楽の花は、小さなメロディーを生み出し、それがいくつも重複して上昇音型として、水面下から少しずつ上昇していきます。中間からの高い弦の音が、トリルとトレモロを持って降りてくる音は、月から蓮に向かって降りてくる光のエネルギーと思ってください。そうした世界からの響きのエネルギーを受けて、音の花は、少しずつ開花を目指します。
 それはかなりドラマティックなものです。最後は、深い静けさのなかで、静かな花の歌が浄化されて歌われます。


小菅優さんインタビュー!

小菅さんは、水戸室内管弦楽団(MCO)とは今回で3回目の共演となります(第75回定期・指揮:小澤征爾[2009年]、第82回定期・指揮者無し[2011年])。その一方で、小菅さんは、世界中のオーケストラから協奏曲の独奏者として招かれて、ご活躍されています。そんな小菅さんから見て、MCOはどのような楽団であると思いますか。

 まず、活動拠点である水戸芸術館のホールが素晴らしくて、オーケストラでも、室内楽を演奏しているような感覚を持つことができます。
 MCOは、一人一人が素晴らしい音楽家で、そして1つ1つの音楽的対話を大事にしてくれます。共演させていただく以前に、私が初めてMCOの演奏を聴いたのは、2008年の指揮者無しで行ったミュンヘン公演で、ベートーヴェンの〈交響曲 第4番〉などのプログラムでした。それぞれの楽器が会話するように、明確にお客様に訴えてきて、アンサンブルとしても呼吸の合った、全体から伝わってくる自然な音楽性に感動しました。そして、私が協奏曲のソロを弾かせていただく時には、私に色々なアドヴァイスをしてくださり、自分の成長にとって本当によい勉強になります。今回も、自分が上に向かってステップアップできるような演奏にしたいと思っています。

指揮者の準・メルクルさんとは、フランス国立リヨン管弦楽団との公演(2011年)で共演されていますね。その時のメルクルさんの印象をお聞かせください。

とても知的な方で、曲の隅々まで熟知なさっていて、正統的な音楽を求めていらっしゃるように思いました。そして、その音楽に対する姿勢はたいへん尊敬しています。リヨンでの共演ではモーツァルト作品だったのですが、今回はベートーヴェンの協奏曲で、どのようなアプローチをなさるのか、とても楽しみにしております。

現在、小菅さんは5年越しの計画で、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲録音を行っていらっしゃいます。今度の演奏会ではベートーヴェンのもうひとつの重要なピアノ曲のレパートリーである「ピアノ協奏曲」から第3番を演奏されます。今回、この作品を選ばれた訳をお聞かせください。

 ベートーヴェンの協奏曲はどの作品も大好きなのですが、第3番は、ベートーヴェン独自の様式を獲得するに至る変わり目にある作品で、しかもハ短調というのがベートーヴェンにとって、とても大事な調性であると言えます。例えば、〈交響曲 第5番 “運命”〉や〈ピアノ・ソナタ“悲愴”〉がこの調性で書かれていています。これらは内面的な音楽であると同時に、情熱的でドラマティックです。この頃、ベートーヴェンは耳が聞こえなくなってきていて、友人に相談したりしているのですが、その彼の苦悩が滲み出ている音楽だと思います。第2楽章はお祈りのような本当に美しい音楽です。また、ベートーヴェン自身が書いたカデンツァが素晴らしいです。第1番や第2番のピアノ協奏曲と比べでも、ピアノがより広く深い表現を獲得しているように感じます。さらに管楽器のパートにもソリスティックな面があり、MCOの管楽器奏者の人たちも素晴らしいので、とても楽しみにしています。シンフォニックな響きをもつオーケストラとピアノとが投げ交わす対話を、お聴きいただければと思います。

最後に、聴衆に向けてメッセージをお願いします。

水戸には親しい気持ちを抱いておりまして、第二の故郷のように思っています。ですから、水戸へは「帰る」というような気持ちでいます。水戸芸術館もサントリーホールも素晴らしいホールなのでお客様と一緒にホールの空気を感じながら、ベストを尽くして演奏したいと思っております。ぜひ、ベートーヴェンのはてしない世界をお楽しみいただけたらと思います。


公演情報

水戸室内管弦楽団 東京公演 指揮:準・メルクル

<公演日程・会場>
2013/7/8(月) サントリーホール 大ホール (東京都)
<出演>
小菅優(p)
<曲目>
細川俊夫:室内オーケストラのための<開花II>
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37
シューベルト:交響曲 第8番 ハ長調 D944<グレイト>

資料提供:水戸芸術館音楽部門



2013-06-25 17:58 この記事だけ表示
 
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