来日中の巨匠リッカルド・ムーティ講演会レポート!「ムーティ、ヴェルディを語る」[公演情報]

ヴェルディ生誕200周年を記念する「東京・春・音楽祭特別公演」を指揮するために来日したリッカルド・ムーティが、10月26日にオーチャードホールで「ムーティ、ヴェルディを語る」と題する講演会をひらいた。


「ムーティ、ヴェルディを語る」

 ムーティは、スカラ座やフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を歴任し、現在、世界最高峰のオーケストラの一つであるシカゴ交響楽団の音楽監督を務めるほか、ローマ歌劇場の終身名誉指揮者のポストにもある。  

 ムーティとヴェルディとの出会いは、3歳のときに父親に連れてもらった「アイーダ」だという。12歳のときには「オテロ」を聴いた。ムーティがヴェルディのオペラを初めて指揮したのは、1969年、フィレンツェ五月音楽祭(フィレンツェ歌劇場)での「群盗」だった。
 「『群盗』を指揮するので、歌劇場からスコア(楽譜)を貸与されました。それは古くからいろいろな指揮者が使ってきたものでした。よく見ると、貼り合わされていて開かないページがいくつもありました。そこをカットして演奏し続けてきたわけです。私はおかしいと思いました。そして歌劇場の責任者に『どうして?』とききました。すると彼は『こうやって演奏するもんなんだよ』と言いました。その一言が私の人生を変えました」  

 作曲家を尊重し、あくまで楽譜に忠実に演奏しようとするムーティの戦いがそこから始まった。
 「カットがあるのはイタリア・オペラばかりだと気づきました。モーツァルトやベートーヴェンのオペラでカットしたり、音を変えて歌ったりすることがあるでしょうか?イタリア・オペラだけがどうして手を加えられるのでしょうか?カットや音の変更は、イタリア人が始めた、イタリア人の悪いことですが、歌手が勝手に歌い、音を自由に変えることがいつのまにか“伝統”になりました。聴衆もカットされたものを聴くのが習慣になっていました。その習慣を破るのは難しいことでした。
 しかし、音を変えずに正確に演奏するだけでは、不十分です。作曲家が何を望んでいたか、裏の意味まで読まなければなりません」
 

 ムーティは、ヴェルディのことを「未来の作曲家」という。
 「まだまだ新しい発見のある作曲家です。ヴェルディの音楽は心の慰めです。ヴェルディは、人間に人間として語りかけます。そして日本人でもイタリア人でも何人でも、みんな同じように彼からのメッセージを受け取ることができます。彼はユニバーサルなのです」  講演会の後半は、日本の若手歌手(安藤赴美子と加藤宏隆)を相手に、「椿姫」第2幕のヴィオレッタとジェルモンの二重唱の公開マスタークラスになった。始めは立って聴いていたマエストロも、途中からは自らピアノ伴奏を弾いて熱血指導。ムーティは、「ヴェルディは音楽ですべての演出を説明している」、「ヴェルディは言葉による劇場」と言い、そのことをマスタークラスを通じて、はっきりと示した。  
 ムーティは、10月30日・31日に「東京・春・音楽祭特別公演」で東京春祭特別オーケストラを相手にオール・ヴェルディ・プログラムを振った。最後は「ナブッコ」から「行け、わが思いよ、黄金の翼にのって」と序曲で締め括られた。「行け、わが思いよ〜」での合唱とオーケストラとのブレンドされた響きはまさに理想的といえるものだった。
  そんなムーティが、来年5月にローマ歌劇場とともに、ヴェルディの2つのオペラ、「ナブッコ」と「シモン・ボッカネグラ」を持って、再び日本にやって来る。ヴェルディの真実の声、真実の響きを伝えるために。

 [取材・文/山田治生]
[撮影/堀田力丸]


公演概要

リッカルド・ムーティ指揮 ローマ歌劇場 2014年日本公演

▼ジュゼッペ・ヴェルディ作曲『ナブッコ』

<公演日程・会場>
2014/5/20(火) 東京文化会館大ホール (東京都)
2014/5/30(金)、6/1(日) NHKホール (東京都)

<キャスト&スタッフ>
指揮:リッカルド・ムーティ
演出:ジャン=ポール・スカルピッタ
出演(予定):ルカ・サルシ/アントニオ・ポーリ/ドミトリー・ベロセルスキー/タチアナ・セルジャン/ソニア・ガナッシ/ローマ歌劇場管弦楽団/ローマ歌劇場合唱団

▼ジュゼッペ・ヴェルディ作曲『シモン・ボッカネグラ』

<公演日程・会場>
2014/5/25(日)、5/27(火)、5/31(土) 東京文化会館大ホール (東京都)

<キャスト&スタッフ>
指揮:リッカルド・ムーティ
演出:エイドリアン・ノーブル
出演(予定):ジョルジョ・ペテアン/バルバラ・フリットリ/フランチェスコ・メーリ/リッカルド・ザネッラート/マルコ・カリア/ローマ歌劇場管弦楽団/ローマ歌劇場合唱団


2013-11-01 17:06 この記事だけ表示
 
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