2014年6月に行われる、現役最高齢ピアニストの一人アルド・チッコリーニ(p) ピアノ・リサイタルの見どころ[公演情報]

 演奏家としての寿命が最も長い楽器は、ピアノではないだろうか。ミチェスワフ・ホルショフスキは99歳まで現役を続け、20世紀最高のピアニストの一人、アルトゥール・ルービンシュタインは89歳で引退リサイタルをひらいた。アルド・チッコリーニは、メナヘム・プレスラー(1923年生まれ)やパウル・バドゥラ=スコダ(1927年生まれ)らと並ぶ、現役最高齢ピアニストの一人。2012年12月に感動的な日本公演を行った彼が、今年6月にまたやって来る。

見どころ

  チッコリーニは、1925年8月15日ナポリ生まれというから、現在、88歳。9歳のとき、オペラ作曲家として高名なフランチェスコ・チレアに音楽的才能を見出され、ナポリ音楽院に入学。同音楽院では、ブゾーニ門下のパオロ・デンツァに師事。13歳でナポリのサンカルロ劇場でリサイタルをひらいたという。1942年、ナポリでショパンのピアノ協奏曲第2番を弾いて、正式なデビューを飾った。しかし、コンサート・ピアニストとしてのキャリアは第二次世界大戦のために一時中断。戦後間もない1947年に最年少でナポリ音楽院の教授に迎えられる。1949年、ロン=ティボー国際音楽コンクールで優勝。以後、パリを拠点として活躍。1950年にはニューヨーク・フィルでチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を弾いて、アメリカにもデビューを飾った。1969年にフランス国籍を取得。パリ音楽院で後進の指導にもあたった。

 フランス近代音楽を得意とし、特に2度のサティ全集の録音は名高い。チッコリーニは、それまで安手のサロン音楽のように思われていたサティの作品に光を当て、その洒脱で洗練された演奏で聴き手を魅了した。20世紀末のサティ・ブームの中心に彼がいたといっても過言ではないだろう。ドビュッシー、ラヴェルももちろん得意であり、セヴラック、マスネ、アルカン、ダンディなどのあまり知られていないピアノ曲の紹介にも務める。サン=サーンスのピアノ協奏曲全集が名盤として知られている。ニュアンスに富み、まさにエスプリを感じさせる演奏を繰り広げる。

 その一方で、彼は、モーツァルトやベートーヴェンの傑作ソナタから滅多に演奏されないレアな作品まで莫大なレパートリーを誇る。なかでもベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の録音は高く評価されている。スカルラッティのソナタの演奏には、彼のイタリア人気質を感じることができる。

 今回の来日は、2012年12月以来、約1年半ぶり。リサイタルでは、ブラームスの「4つのバラード」、グリーグの「ピアノ・ソナタ」、ボロディンの「小組曲」、カステルヌオーヴォ=テデスコの「ピエディグロッタ 1924 ナポリ狂詩曲」という長いキャリアを誇るチッコリーニらしい、様々な国々の多彩な音楽が演奏される。ドイツ音楽にも精通したチッコリーニは、ブラームスも得意としている。グリーグはチッコリーニが特別に愛情を注ぐ作曲家。彼は「グリーグは驚くほどきれいな目をしていた」という。チッコリーニが北欧の抒情をどう描くのか、楽しみだ。ロシアのボロディンのチャーミングな作品はチッコリーニらしい選曲。チッコリーニと同じイタリア出身のカステルヌオーヴォ=テデスコの「ペディグロッタ 1924 ナポリ狂詩曲」は、チッコリーニの故郷ナポリが題材になっている。ピエディグロッタの祭は、ナポリで最も人気の高い祭である。ちょうどチッコリーニが生まれた頃に書かれた作品だけに、彼の原点を感じることができよう。チッコリーニの多彩な魅力が満喫できるプログラムで円熟の極みというべき演奏を堪能したい。


[文/山田治生]

公演概要

アルド・チッコリーニ(p) ピアノ・リサイタル

<公演日程・会場>
2014/6/18(水) 東京芸術劇場 コンサートホール (東京都)
19:00開演

<曲目>
ブラームス:4つのバラード Op.10
グリーグ:ピアノ・ソナタOp.7
ボロディン:小組曲
カステルヌオーヴォ=テデスコ:ピェディグロッタ 1924ナポリ狂詩曲



2014-02-17 14:34 この記事だけ表示
 
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