2014/5/6に行われる、鬼才イヴリー・ギトリス(vn) ヴァイオリンリサイタルの見どころ[公演情報]

 イヴリー・ギトリスは、鬼才としかいいようがない。90歳を超えての演奏活動は驚異的であり、おそらく現役最年長ヴァイオリニストであろう。エネスコ、ティボー、フレッシュ、フーベルマンらに学んだという、生きる伝説。その個性的で魔術的な演奏は、ほかの誰にも真似できない。

見どころ

 1922年、イスラエルのハイファ生まれ。パリのエコール・ノルマル音楽学校で学ぶ。その後、イギリスに渡り、戦後、ロンドンでソリストとしてデビュー。1951年、ロン・ティボー国際音楽コンクールで第5位に入賞。1955年にアメリカ・デビュー。以後、セル、オーマンディ、バーンスタインらの巨匠指揮者と共演。その後、パリを本拠地とし、人気ヴァイオリニストとして活躍。トリュフォー監督の映画「アデルの恋の物語」にも出演した。マルタ・アルゲリッチとは音楽仲間であり、別府アルゲリッチ音楽祭などでたびたび共演している。NHK交響楽団とは、これまでにシベリウスやストラヴィンスキーのヴァイオリン協奏曲を共演。

 昨年出版された彼の評伝「イヴリー・ギトリス ザ・ヴァイオリニスト」には、東日本大震災の直後にギトリスが被災地を訪問した際のエピソードが紹介されている。2011年の東日本大震災直後、ギトリスは、居ても立ってもいられなくなり、日本を行きを決める。しかし、被災地で出会ったものは、まさに想像を絶していた。石巻の避難所となっている体育館を訪れたときは、その重苦しい雰囲気にさすがのギトリスも「ここで演奏すべきではない」と思ったという。しかし、被災者から拍手が起こり、ギトリスは促されるようにヴァイオリンを奏で始めた。ギトリスがみんなの知っている旋律を弾くと、手拍子が沸き起こる。ギトリスは椅子から立ち上がり避難所内を歩きながら演奏した。石巻の中学校の吹奏楽部の生徒たちとも演奏を通しての心のふれあいがあった。ギトリスの温かい人間性を伝える感動的な話であるが、そうすることは、彼にとって、芸術家としての存在意義に関わることであり、とても自然なことであった。

 そんなギトリスが、また5月に来日し、リサイタルをひらく。上手い下手では判断できない独自のヴァイオリン・ワールド。今回は、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」、クライスラーの「美しきロスマリン」、「愛の哀しみ」、マスネの「タイスの瞑想曲」、ブロッホの「ニグン」、パラディスの「シシリエンヌ」などのヴァイオリンの名曲が予定されている。ベートーヴェンの「春」は、ギトリスの十八番のひとつ。今回はどのような演奏を聴かせてくれるのだろうか。「美しきロスマリン」では、彼の“魔弓”と呼ばれる弓遣いに魅了されることだろう。美しい旋律の「愛の哀しみ」や「タイスの瞑想曲」なども楽しみ。ブロッホのユダヤ色の濃い「ニグン」では、ギトリスの民族的な原点と作品への共感を聴くことができるに違いない。パラディスは、モーツァルトと同時代に生きた、盲目の女性ピアニスト。彼女が作曲したとされるピアノのための「シシリエンヌ」は、20世紀の名ヴァイオリニスト、ドゥシュキンによって美しいヴァイオリン小品に編曲され、アンコール・ピースとしてしばしば演奏されている。小品の上手いギトリスの妙技が堪能できるだろう。

 今回のリサイタルは、強烈な人生を歩んできた真の巨匠のメッセージをダイレクトに受け取れる、まさに貴重な機会といえよう。


[文/山田治生]

公演概要

イヴリー・ギトリス(vn) ヴァイオリンリサイタル

<公演日程・会場>
2014/5/6(火・祝) 紀尾井ホール (東京都)
14:00開演

<出演者>
イヴリー・ギトリス(vn)
ヴァハン・マルディロシアン(p)

<曲目>
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」
クライスラー/美しきロスマリン、愛の哀しみ マスネ/タイスの瞑想曲
ブロッホ/ニグン パラディス/シシリエンヌ
※上記は演奏予定曲目となり、実際のプログラムは当日発表とさせていただきます。



2014-02-17 18:51 この記事だけ表示
 
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