7月の歌劇「ホフマン物語」公演を前に、フランス国立リヨン歌劇場の首席指揮者、大野和士さんへインタビュー![インタビュー]


インタビュー

 フランス国立リヨン歌劇場の首席指揮者を務める大野和士にフランスの三大オペラをたずねると、彼は、ビゼーの《カルメン》、ドビュッシーの《ペレアスとメリザンド》、そして、オッフェンバックの《ホフマン物語》をあげる。
「《ホフマン物語》は、オペラとしての統合性、劇の展開の必然性、女性の声を3つ(オランピア、アントニア、ジュリエッタ)にわけた先見性、など本当に素晴らしいです」

 《ホフマン物語》は、実在した、ドイツの鬼才E.T.A.ホフマンをモデルとしている。彼は、詩人であり、作家であり、作曲家であり、指揮者であり、画家であり、裁判官であった。そんな彼が20歳以上年下の女性に失恋し、その恋の痛手を文学に向けたのであった。
「ホフマンはロマン派の代名詞。現実から逃避し、夢の中でさまよっていた彼は、衝動に押されるように作品を生み続け、市民社会の生活には帰れなくなってしまう。そして、現実に戻ったときには、恋でも、金銭でも、過酷な絶望感を味わうのでした。
 一方、オッフェンバックは、ブッフ・パリジャン座(小劇場)を経営し、超人的なエネルギーで数々の大ヒット作を生み出しました。そんな彼も、喜劇的なものではなく、5幕もののオペラを書いて、パリのコミック座やオペラ座などの大劇場で上演することにずっと憧れていました。しかし、1880年に《ホフマン物語》のピアノ・スコアを完成させた直後、彼は亡くなってしまいます。
 そんなホフマンの夢やオッフェンバックの憧れがこの《ホフマン物語》の核心です。ホフマンの恋に焦がれる夢の世界と、劇場人としての最高峰での上演が成就する目の前で亡くなったオッフェンバックのじりじりとした思いが、このオペラで奇跡的に一緒になったのです。私は、今回の公演を通じて、みなさんと果てしない夢を見たいと思います。
 《ホフマン物語》は、オッフェンバックが完成させる直前に亡くなったために、後世の人々がばらばらなポプリ(ごった煮)を作って、改変を重ね、何が本当の《ホフマン物語》かわからなくなってしまいました。20世紀後半になって漸くオーセンティックなバージョンがつくられ、真の姿が明らかになりました。今回は、真正《ホフマン物語》を紹介したいと思います」


 今回は、プロローグとエピローグがあり、ホフマンの三人の恋人は、オランピア、アントニア、ジュリエッタの順に現れる。
「音楽的な理由からも、バロックのような軽いソプラノのオランピア、ロマンティックでリリコ(叙情的)のアントニア、そしてヴェリズモかと思うような激しいドラマティコ(劇的)のジュリエッタの順番でなければなりません」

 そんな三人の恋人を、今回はパトリツィア・チョーフィが一人で演じる。
「機械仕掛けの人形であるオランピアではアクロバティックな超絶技巧、アントニアでは運命的な歌手、そしてジュリエッタでは影を盗むアグレッシヴで壮絶な女性を歌います。見た目は可憐な方ですが、舞台に出たとたん、ハッとするような役柄になりきります」

 主役のホフマンは、ジョン・オズボーンとレオナルド・カパルボが交替で歌う。
「オズボーンは、ホフマンに必要な“憧れ”に魅入られた男。彼は、今まで私が最高のホフマンだと思っていたニール・シコフを超えています。イタリア人のカパルボは、声が強く直情的なホフマンです」

 大野が率いるリヨン歌劇場のオーケストラは、大野が就任してからますます進化を遂げている。
「リヨン歌劇場のオーケストラは、もともと一人ひとりがきれいな音を出す、清澄な響きが魅力的でした。私が来てからは、それに付け加えて、ドラマティックな表現の波が大きくなりました。歌劇場のオーケストラでは、その2つが必要なのです」

 リヨンは、ポール・ボキューズらが活躍する美食の町。そんなリヨンで最も予約が取りにくいのがいくつかの日本人シェフのレストランだという。フレンチの本場での日本人の活躍は、リヨン歌劇場に新たな風を巻き起こす大野和士の奮闘とまさにシンクロしているのである。

[取材・文/山田治生]
[撮影/平田貴章]

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公演概要

フランス国立リヨン歌劇場 日本公演2014 歌劇「ホフマン物語」 Bunkamura25周年記念

<公演日程・会場>
2014/
7/5(土)15:00開演
7/7(月)18:30開演
7/9(水)15:00開演
Bunkamura オーチャードホール

<スタッフ>
演出・衣裳:ロラン・ペリー

<出演者>
指揮:大野和士(フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者)
ホフマン:ジョン・オズボーン[7/5、7/9]、レオナルド・カパルボ[7/7]
オランピア/アントニア/ジュリエッタ/ステッラ:パトリツィア・チョーフィ
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル博士/ダペルトゥット:ロラン・アルバロ
ミューズ/ニクラウス:ミシェル・ロジエ
アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:シリル・デュボア
ヘルマン/シュレーミル:クリストフ・ガイ
ナタナエル/スパランツァーニ:カール・ガザロシアン
アントニアの母の声:マリー・ゴートロ

管弦楽:フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団
合唱:フランス国立リヨン歌劇場合唱団

<チケット料金(全席指定・税込)>
S席39,000円 A席34,000円 B席29,000円
C席24,000円 D席18,000円 E席13,000円



2014-06-10 17:53 この記事だけ表示
 
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