ピアニスト、ピエール=ロラン・エマールからメッセージ!「カーターへのオマージュ」のこと[1/2][公演情報]

 現代音楽の旗手でもあり、古典作品を演奏する超一流の音楽家でもある、現代最高峰のピアニスト、ピエール=ロラン・エマールから10月の「室内楽コンサート」公演にむけてメッセージが届きました!
第1回は「今回の演奏曲目」について。第2回は「カーターとの出会い」(7/30更新予定)の全2回連載です。


今回の演奏曲目

 この公演は、104歳の誕生日を目前に他界したエリオット・カーターにオマージュを捧げるものです。プログラムは作曲家カーターのポートレート/肖像として構想されており、そのため彼の人生の様々な時期に書かれた作品を集めています。

1948年に書かれた《チェロとピアノのためのソナタ》には、新古典主義の影響が依然として色濃く残されており(カーターはパリでナディア・ブーランジェに師事しました)、第2楽章を中心にジャズの影響もみられます。それでも、冒頭では既に、チェロが表情豊かに歌うフレーズと、ピアノが放つドライで規則的な音が対置されています。変化のない行進曲を奏でるピアノは、チェロの抒情性には素知らぬ顔。さらにピアノとチェロは、異なるテンポで歩みを進めます。これこそが、カーターの音楽の根本的な特徴です。まずは、異なる性格を付された複数の声部がポリフォニーを紡いでいく手法。そこでは各奏者が、大いなる自主性を与えられた役者のような存在になり得ます。そして、異なるテンポの並置。これはカーターにとって、多様な時間が共存する世界の豊かさを示す方法です。

ピアノ・ソロのための3作品は、カーターの作品群の中でも比較的最近に書かれたものです。《再会》はピエール・ブーレーズに捧げられた短い曲です。《90+》はこのジャンルを一新する、三つの“声部”を持つ創意に富んだ作品です。一つ目の声部は規則的で殆ど動きのない4声のコラールに喩えられます。二つ目は絶えず変化を続ける、飛び跳ねるようなメロディ。そして三つ目は、計90回、規則的に音をカウントしていく小さな時計のごとき要素です。90とは、カーターが本作を捧げた友人で作曲家のゴッフレード・ペトラッシの当時の年齢に当たります。《カテネール》は、トッカータ風の作品。音があちらこちらを空間的に駆け巡り、その動きがあまりに不意であるため、急転回を繰り返すただ一本の音の線が、しばしばポリフォニックな印象を与えます。

カーターがその独自のスタイルを確立したのは、割合と年を重ねてからのことでした。1974年に完成された《ヴァイオリンとピアノのためのデュオ》は、当時の濃密かつ魅惑的で、高い演奏技術を要求する作品群に含まれます。カーターはこの作品において、舞台上で2人の演奏者が経験し得るあらゆる関係の在り方を探究しているように思えます。冒頭と曲尾、ヴァイオリンが挑発的になる場面においては、2人の奏者は互いに知らぬふりをしている印象を受けます。その間に徐々に現れる短いエピソードの数々は、ある時は二人の敵対関係、そしてある時は類似・補足・結合・・・といった関係によって紡がれていきます。次第に気分が変化していくこの作品は、劇的な力強さを備えています。

《エピグラム》はカーターの最後の作品です。簡潔で見通しの良い12の短い構成曲は、まさにカーターの音楽世界そのものを体現しています。そこでは多様な層の重なりや時間の発展が、親しみやすい独創性、深み、ユーモアと共に提示されます。
ところでピエール・ブーレーズは、カーターが作曲した、ソプラノと室内アンサンブルのための《長い年月への問い What are Years》をオールドバラ音楽祭で初演した際に、カーターに電話でこう伝えました。「貴方はまるで青年の様に作曲しますね。」
カーターがその死の数日前に完成させた《エピグラム》にも、同様の賛辞を贈りたいと思います。この作品の気質、想像力、生気は抗いがたい魅力を放つものです。


公演概要

ピエール=ロラン・エマール(p)


[室内楽コンサート]
<公演日程・会場>
2014/10/6(月) 紀尾井ホール (東京都)

<共演>
ディエゴ・トジ(ヴァイオリン)、ヴァレリー・エマール(チェロ)

<演目>
エリオット・カーター:チェロ・ソナタ/90+/再会/「ピアノについての2つの考察」から カネテール/ヴァイオリンとピアノのためのデュオ/エピグラム(アジア初演)


[ピアノ・リサイタル]
<公演日程・会場>
2014/10/4(土) 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール (埼玉県)
2014/10/8(水) 紀尾井ホール (東京都)

<演目>
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻(全曲) BWV846-869




2014-07-23 15:16 この記事だけ表示
 
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