ピアニスト、ピエール=ロラン・エマールからメッセージ!「カーターへのオマージュ」のこと[2/2][公演情報]

10/6(月)19:00に紀尾井ホールで行われる、ピエール=ロラン・エマールの室内 楽コンサート「カーターへのオマージュ」。
第2回は「カーターとの出会い」。今回のコンサートのテーマでもある、2012年11月に103歳で亡くなった、現代を代表する偉大な作曲家のひとり、エ リオット・カーターとの思い出について語ります。



カーターとの出会い

 私がエリオット・カーターと出会ったのは1977年1月、パリのアメリカン・センターでの公演の準備の折でした。演奏したのは、前記にもある《チェロ・ソナタ》と《デュオ》。光栄にも私が初めてカーターと仕事を共にした作品です。すぐさま私は、彼の才気に満ちた明晰な精神とあたたかい優しさ、人間味にあふれた飾り気のない人柄に感銘を受けました。その後、彼とはアンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーとして、しばしば顔を合わせることになります。同アンサンブルは、彼の音楽をしばしば取り上げ、また何作もの初演を任されました。ピエール・ブーレーズはカーターの作品の熱心な演奏者であるだけでなく、その音楽の強力な擁護者でもありました。多くの室内楽作品はもとより、ソプラノと室内アンサンブルのための《考える鏡 A mirror on which to dwell》、室内アンサンブルのための《五極管Penthode》、そして《フルート、オーボエ、チェロ、チェンバロのためのソナタ》がとりわけ強く印象に残っています。最も思い出深い出来事の一つは、私が2000年にパリのシャトレ座で行ったプロジェクトです。カーターの《二重協奏曲 Double concerto》を取り上げました。デイヴィッド・ロバートソンの卓越した指揮と、アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーたちが刻む完璧なリズムが素晴らしかったことに加え、公演の前半でキングズ・シンガーズがオルランド・ディ・ラッソの作品を輝かしく歌いあげたことも記憶に鮮明に残っています。このプログラムの意図は、西洋音楽の伝統におけるポリフォニーの永続性と変化を示すことにありました。

 2000年代に入ってから、エリオット・カーターと私の音楽的・個人的な関係はさらに発展し深まっていきました。カーターの大半の独奏曲を彼のもとで演奏し、ピアノ独奏曲の録音も行いました(ワーナー・レーベル)。さらに《カテネール》や《会話 Conversations 》の初演を任され、私が2009年から芸術監督を務めているオールドバラ音楽祭でも彼の作品の紹介にとりわけ力を入れてきました。これらのエピソードは、近年の私に霊感を与え続けてくれたカーターとの交流から生まれた、多くのかけがえのない活動のハイライトです。

 カーターと共にする仕事はいつも驚くほど新鮮で、100歳になっても、彼の耳の良さ、反応の機敏さ、臨機応変さは健在でした。彼は気高い心の持ち主でしたが、それでも重々しい素振りは一切見せませんでしたし、決して奏者を突き放さずに、常に最良の演奏を引き出してくれました。カーターは簡潔に本質に至るすべを心得ていました。例えばメゾフォルテで演奏してしまった際には、そうではなくメゾピアノの指示を守るようにと伝えられましたし、そうすることで正確なニュアンスや声部間の適切なバランスを、奏者が即座に把握できるように促してくれました。

 深い教養に根差したヒューマニスト・カーターは、重々しさとは無縁の人でした。彼はその洗練を極めた素朴さによって、知的なるものから如何なる傲慢さをも遠ざけたのです。


公演概要

ピエール=ロラン・エマール(p)


[室内楽コンサート]
<公演日程・会場>
2014/10/6(月) 紀尾井ホール (東京都)

<共演>
ディエゴ・トジ(ヴァイオリン)、ヴァレリー・エマール(チェロ)

<演目>
エリオット・カーター:チェロ・ソナタ/90+/再会/「ピアノについての2つの考察」から カネテール/ヴァイオリンとピアノのためのデュオ/エピグラム(アジア初演)


[ピアノ・リサイタル]
<公演日程・会場>
2014/10/4(土) 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール (埼玉県)
2014/10/8(水) 紀尾井ホール (東京都)

<演目>
J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻(全曲) BWV846-869




2014-07-30 13:37 この記事だけ表示
 
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