来日間近! パッパーノが誇る「ローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団」とその躍進[インタビュー]

 秋深まる季節、ヨーロッパのオーケストラや劇場が相次いで新シーズンを迎えている。 イタリア最古のシンフォニー・オーケストラとして名高い「ローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団」の新シーズン開幕は10月25日(本拠:ローマ)。しかし、そこにリリカルで絢爛なイタリア音楽を並べたプログラムを期待すると、やや肩透かしをくらってしまう。前半は、円熟期に入ったエフゲニー・キーシンを迎えてのロシア音楽(ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番)と、ムソルグスキーの「禿山の一夜」。後半には、11月の日本ツアーでも披露されるリヒャルト・シュトラウスの大曲「アルプス交響曲」を奏で、この作曲家の生誕150年を祝おうというプログラムだ。



音楽監督サー・アントニオ・パッパーノに訊く

 数週間後に日本を訪れる「ローマ・サンタ・チェチーリア管」が携えてくる曲目に目を通しても、すぐさま同様の――いわゆる“イタリア色”の薄い――傾向に気づかされる。メインにはR.シュトラウスの「アルプス交響曲」とブラームスの交響曲第2番を配置。これに先立ち、ブルッフとドヴォルザークの協奏曲が演奏されるという、ドイツ色の強いラインナップだ。

 音楽監督サー・アントニオ・パッパーノに、この意外な選曲の意図や楽団の近況、日本ツアーへの意気込みをたずねた。

■イタリアのオーケストラの演奏で聴くR.シュトラウス&ブラームス

「イタリアのオーケストラにとって、たしかにドイツ音楽は、例えば母国イタリアのオペラに比べれば遠い存在です。しかし、サンタ・チェチーリア管は発足当時から現在まで、オペラとは一定の距離を置く“シンフォニー・オーケストラ”であり続けてきた楽団です。彼らがイタリアのリリカルなレパートリーを見事に演奏するのは当然のことですが、一方で、彼らが長年のあいだ、優れた指揮者たちと共にドイツやロシアの交響曲の演奏の伝統を育んできたことも事実です。」

とりわけ今年、生誕記念イヤーを迎えたR.シュトラウスに寄せる楽団とパッパーノの想いは強いという。

「かつて、R.シュトラウスがサンタ・チェチーリア管を指揮するために何度かローマを訪れたというエピソードは、今日の団員たちにとって誇りであり続けています。私自身、オペラ指揮者としてR.シュトラウスの音楽には長年、愛着を抱いてきました。2002年からイギリスのロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督をつとめていますが、初年度に振った第1作目が《ナクソス島のアリアドネ》であったことは、偶然ではありません。」

「R.シュトラウスの傑作のひとつである《アルプス交響曲》を、ローマの新シーズン開幕コンサートで取り上げたのちに、日本にも携えていくというアイデアは、私が声高に主張したものです。絶対にこの曲で勝負したい!、と(笑)。確かに《アルプス交響曲》はドイツ音楽にカテゴライズされる作品ですが、アルプスはフランスやスイスだけではなく、イタリア北部にもまたがっていますから、題材としてはとても身近です。何より、個々の演奏技術が驚異的に高い木管・金管プレーヤーたちが名を連ねるサンタ・チェチーリア管による《アルプス交響曲》の演奏が退屈なものと化すはずはありません。」

 パッパーノは、サンタ・チェチーリア管とブラームス作品の関係についてはこう説明する。
「日本ツアーのために選んだ第2番の交響曲は、最近もローマの定期公演で取り上げています。演奏が極めて満足のいくレベルに達し、海外ツアーにもぜひ持っていきたいと考えたのです。ブラームスはここ数年の間に、私がサンタ・チェチーリア管とともに繰り返し演奏している作曲家のひとり。演奏するたびにローマの聴衆からの好意的な反応も多く、励みになっています。ハンブルクで生まれたブラームスが、生涯のあいだ、温暖でまばゆい光に満ちた南イタリアに惹かれていたことは有名ですね。第2番の交響曲には、とりわけその憧れの想いが反映されているように思います。サンタ・チェチーリア管の演奏を通して、この交響曲のそうした魅力が浮き彫りになれば嬉しいですね。」

■イタリア音楽による幕開け

 もちろんパッパーノは、サンタ・チェチーリア管とともに日本の聴衆にイタリア音楽を届ける、という使命から完全に手を引いたわけではない。今回、彼らが日本ツアーのために準備している2種のプログラムはいずれも、イタリア・オペラの序曲で華やかに幕開けする。

ロッシーニのオペラ「セビーリャの理髪師」序曲は、去る10月22日に“来日記念盤”として日本でリリースされたばかりの最新盤『ロッシーニ序曲集』からの一曲。あの得も言われぬ“ロッシーニ・クレッシェンド”に乗って湧き上がるコン・ブリオ、みなぎる情熱など、イタリア最高のオーケストラでしか味わえない感覚を、公演の幕開けで堪能できるのはやはり嬉しい。


■日伊の豪華ソリストとの協演

 日本とイタリアを代表する弦楽器奏者たちとの共演も、今回のツアーの魅力の一つだとパッパーノは力説する。

「ブルッフで共演する諏訪内晶子さんとは、初めての共演になります。私が拠点を置くイギリスでも、常に素晴らしい演奏を披露している方。国際舞台での経験が豊富で、現代音楽にも長けているなど、柔軟で好奇心旺盛なヴァイオリニストであるとの印象をかねてから抱いています。彼女が楽団の長所をどのように刺激してくれるのか、共演が決まった時からずっと楽しみにしているのです。」

 ドヴォルザークのチェロ協奏曲で共演するマリオ・ブルネロとは、すでに同曲の名盤をリリースしている。

「マリオは、音楽好きであれば知らぬ者はいない、イタリア出身の大チェリストですが、意外にも私が彼と初共演を果たしたのは、ドヴォルザークのチェロ協奏曲の録音の折だったのです。ずっと共演したいと思っていたので、これが実現した時にはひたすら嬉しかったですね。聴き慣れ・演奏し慣れたはずの名曲ですが、マリオが作品にもたらした実に深みのある抒情性を、とても新鮮に感じました。日本では、サンタ・チェチーリア管とマリオ、そして私の“イタリアン・トリオ”によるドヴォルザークの演奏を通して、最高に美しいカンタービレをお届けできると確信しています。」

 2005年にスタートしたパッパーノとサンタ・チェチーリア管の二人三脚は、早いもので10シーズン目を迎えた。11月の久々の来日公演は、日に日に信頼感を深めていく彼らの躍進ぶりを目の当たりにする、エキサイティングな機会となるだろう。


公演概要

ローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団


【 京都公演 11/5(水) 】

<日程・会場>
2014/11/5(水) 京都コンサートホール大ホール (京都府)

<出演>
指 揮: アントニオ・パッパーノ
チェロ: マリオ・ブルネロ

<曲目>
ヴェルディ:オペラ「ルイザ・ミラー」序曲
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73

【 東京公演 11/7(金) 】

<日程・会場>
2014/11/7(金)  サントリーホール 大ホール (東京都)

<出演>
指 揮: アントニオ・パッパーノ
チェロ: マリオ・ブルネロ

<曲目>
ヴェルディ:オペラ「ルイザ・ミラー」序曲
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 op.73

【 東京公演 11/11(火) 】

<日程・会場>
2014/11/11(火)  サントリーホール 大ホール (東京都)

<出演>
指 揮:アントニオ・パッパーノ
ヴァイオリン:諏訪内晶子

<曲目>
ロッシーニ:オペラ「セビーリャの理髪師」序曲
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 op.26
R.シュトラウス:アルプス交響曲 op.64

【 愛知公演 11/10(月) 】

<日程・会場>
2014/11/10(月)   愛知県芸術劇場コンサートホール (愛知県)

<出演>
指 揮:アントニオ・パッパーノ
ローマ・サンタ・チェチーリア国立管弦楽団
チェロ:マリオ・ブルネロ

<曲目>
ヴェルディ:オペラ「ルイザ・ミラー」序曲
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 op.104
ブラームス:交響曲 第2番 ニ長調 op.73


2014-10-27 20:20 この記事だけ表示
 
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