久石譲プレゼンツ「Music Future vol.2」その魅力をライターの前島秀国さんが解説![公演情報]

 国立音大在学中よりミニマル・ミュージックに興味を持ち、現代音楽作曲家として活動を開始した久石譲は、今から30年以上前、自ら演奏会を企画し、当時最先端のミニマル・ミュージックを積極的に演奏・紹介していた。『風の谷のナウシカ』以降、彼が映像音楽を中心とする音楽に活動の軸足を置くようになっても、自身のルーツであるミニマル・ミュージックの作曲を継続してきた経緯は、多くのファンの知るところである。さらに、近年指揮者としても本格的な活動を開始すると、久石は作曲家出身の指揮者という立場から、現代に書かれた優れた音楽を紹介していきたいと強く願うようになった。そんな彼が、現代屈指のミニマリストという視点で最先端の音楽を自らセレクト・紹介すべく始めたコンサートシリーズが「Music Future」である。

“未来に伝えたい古典”
「Vol.2」は“アメリカン・ミニマル・ミュージック”をテーマに

 本シリーズの開始に際して決められた大まかな指針は、次の通りである。まず“未来に伝えたい古典”というべき、評価の定まった重要作を紹介すること。併せて、久石より若い世代に属する注目の作曲家を必ず紹介すること。一人よがりの難解な語法で書かれた音楽ではなく、基本的に調性システムも組み込んで書かれた聴衆と高いコミュニケーション能力を持つ音楽――具体的には親しみやすいメロディーやハーモニーで書かれ、クラシックならではの美しいアコースティックな響きを持ちながら、シンプルで力強く、聴く者の心にダイレクトに訴えかけるミニマル・ミュージックのような作品――を紹介すること。欧米で高い評価を受けながら、まだ日本で初演されていない作品/作曲家を紹介すること。そして、久石の新作を世界初演、または演奏すること。

 このようなコンセプトに基づいて昨年開催された「Vol. 1」は、久石の新作《弦楽四重奏曲第1番》と《Shaking Anxiety and Dreamy Globe for 2 Marimbas》の世界初演を中心に据えながら、彼がかねてから強いシンパシーを寄せている作曲家、欧米では“ホーリー・ミニマリズム(聖なるミニマリズム)”と呼ばれている東欧の作曲家2人がフィーチャーされた。ポーランド出身のヘンリク・グレツキ作曲《あるポーランド女性(ポルカ)のための小レクイエム》(久石は指揮のほか、ピアノパートも一部担当)と、エストニア出身のアルヴォ・ペルト作曲《スンマ〜弦楽四重奏のための》及び《鏡の中の鏡〜チェロとピアノのための》(ピアノパートは久石)である。さらに久石が注目する若手作曲家として、アメリカ人ニコ・ミューリ―の作品から、珍しい6弦エレクトリック・ヴァイオリンを独奏に用いた《Seeing Is Believing》が久石の指揮で日本初演された。ビョークとのコラボレーションからメトロポリタン・オペラの委嘱オペラまで幅広い活動を見せているミューリ―の管弦楽曲を日本で初紹介したこと、さらに6弦エレクトリック・ヴァイオリンを用いたクラシック作品を日本で初演奏したこと、という点からも「Vol.1」がもたらした成果は極めて大きかったと言えるだろう。

 前回の「Vol.1」が“ヨーロッパ(東欧)”に焦点を当てていたとするならば、今回開催の「Vol.2」では“アメリカ”が中心的テーマを担っている。“アメリカン・ミニマル・ミュージック”と呼ばれるミニマリスト第1世代の作曲家の中で、日本でも特に人気の高いスティーヴ・ライヒの代表作《エイト・ラインズ》(邦人プロ演奏家による日本初の演奏)。第1世代に直接影響を受けた“ポスト・ミニマリズム”の作曲家で、久石同様指揮者としても活動しているジョン・アダムズの《室内交響曲》。そして、彼らの影響を受けた“ポスト・クラシカル”の注目株にして、インディーズ・バンド「ザ・ナショナル」のギタリストとしても知られるブライス・デスナーの弦楽四重奏曲《Aheym》(日本初演)。これら3曲の演奏によって、ミニマリスト第1世代から最先端の“ポスト・クラシカル”へと続く、ミニマルを中心としたアメリカ音楽過去30年の軌跡を明快に辿ることが出来るだろう。

 そして「Vol.2」の目玉となる久石の世界初演作品は、《Single Track Music 1 for 4 Saxophones and Percussion》と《室内交響曲 for Electric Violin and Chamber Orchestra》の2曲を予定。前者は久石が今後展開していくミニマル・ミュージックの方法論を具体的に示した最重要作、そして後者は上述の《Seeing Is Believing》の6弦エレクトリック・ヴァイオリンに刺激を受けた久石が、初めてこの楽器の作曲に挑戦した野心作である(同楽器のためにクラシック作品を書いた作曲家は現時点でミューリーのほか、ジョン・アダムズやテリー・ライリーなど、ごくわずかしか存在しない)。

 ここ30年の音楽シーンにおいて、なぜミニマル・ミュージックが広く受け入れるようになったのか。そして、なぜ久石の音楽が日本にとどまらず、世界中で受け入れられるようになったのか。前回同様、今回も“音楽の未来”を鮮やかに示してくれるであろう「Music Future Vol.2」の中に、必ずやその答えを見つけ出すことが出来るはずだ。

[取材・文=前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)]

公演概要

久石譲プレゼンツ「ミュージック・フューチャーvol.2」

<公演日程・会場>
2015/9/24(木)〜9/25(金) よみうり大手町ホール (東京都)

<出演・曲目>
出演:久石譲 ほか

<演奏予定曲>
スティーブ・ライヒ「エイト・ラインズ」
ジョン・アダムズ「室内交響曲」
ブライス・デスナー「Aheym」
久石譲「室内交響曲」(世界初演) ほか



2015-09-03 17:17 この記事だけ表示
 
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