イギリスの巨匠 「サー・ネヴィル・マリナー」 音楽や楽団、そして日本への思いを語る![公演情報]

©Pacific Concert Management

 バロックから現代に及ぶ多彩なレパートリーと、端正な音楽創りで世界中の聴衆を魅了し続けてきたイギリスの巨匠、サー・ネヴィル・マリナー。90歳を超えてなお、矍鑠たる指揮ぶりで瑞々しい響きを紡ぎ続ける彼が来春、手兵であるアカデミー室内管弦楽団(アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ)を率いて再び日本の音楽ファンの前に再び降臨し、ベートーヴェンの交響曲第7番をはじめとする佳品の数々を披露する。「日本でのステージには、多くの若い聴衆が来てくれる。とても楽しみですね」と話すマリナー。音楽や楽団、そして日本への思いを聞いた。

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少年のような眼差しで語る。

 「たとえ私がいなくなったとしても、アカデミー室内管は存在し続けることでしょう。楽団では毎年、若いメンバーを迎えていますが、素晴らしい技量と音楽性を持ち、アンサンブルに加わると瞬く間に溶け込んでゆきます。ほとんどイギリス人ですが、最近は幾人かドイツ人、フランス人やアメリカ人も加わりました。そうすることで、ベストな演奏のための“温度”を保つことができる。小規模なオーケストラにおいて、奏者を選ぶには、まるで幾つかのカルテットを組むかのように、室内楽的に考えてやると、うまくゆくんです」。創立から半世紀余りを経ても、鮮烈さを微塵も失わぬ楽団運営の秘訣を語る。

 そして、「ロンドンやニューヨークと比較しても、より多くの若い人たちがコンサートに足を運んでくれるだけでなく、終演後も私に会いに来てくれます。とても嬉しいですね」と日本への思い入れを語る。次回の来日公演はベートーヴェンの交響曲第7番、プロコフィエフの交響曲第1番「古典」、ヴォーン・ウィリアムズ「トマス・タリスの主題による変奏曲」という興味深いラインナップ。「ロシア、イギリス、そしてドイツと作品の“国籍”は違うものの、その基本は、ドイツとイタリアのサウンド。そして、私は現代のレパートリーへ意識的に対峙するようにしています。今回は、ベートーヴェンに、20世紀の2つの作品を組み合わせましたが、特にこれらは、18世紀以前の音楽へ関連付けられています」。

 アカデミー室内管を率いての初来日は、1972年春。「その時のことは、よく覚えていますよ」と微笑む。神奈川公演では演奏会場の隣でボヤが起こるというハプニングも。「しばらく待ってから、楽員と共に外に避難しましたよ。誰ひとりパニックにもならず、騒ぎが落ち着いてから、演奏会を再開した。でも、停電したままだったから、後ろの方からスタッフたちが、トーチよろしく懐中電灯でステージを照らしてくれてね…(笑)。まったく、思いがけないことって、起こるものですね」と愉快そうに振り返る。

 今年5月には兵庫芸術文化センター管弦楽団を振り、11月にはNHK交響楽団との共演も予定、日本の楽団を指揮する機会も多い。「私は1950年代にロンドン交響楽団の一員として初めて来日し、ほどなく日本の楽団の指揮も始めました。最初のうちこそ余裕のない感じでたが、それほど時間を置かずに、ボストン交響楽団にもひけをとらぬ、質の高い演奏ができるようになりました。世界的に見ても、日本の楽団は、実に心地よいクラシック音楽を提供できていると思いますよ」。

 年齢を重ねるごと、先鋭さを増してゆくサウンド創り。そして、リハーサルが何時間に及ぼうと、指揮台に立ち続けるバイタリティ。若さの秘訣を尋ねると「私は生まれて来る時、父親と母親を慎重に選んだから…」と冗談を飛ばし、モーツァルトの交響曲などに聴く、近年のきびきびしたテンポ取りについても「精気あふれる演奏をしないと、聴衆が退屈しちゃうからね」とニヤリ。そして、なお「新たなレパートリーへの興味は尽きない」と話し、特にオペラへのこだわりを隠さない。「作品では、特にプッチーニの『ラ・ボエーム』が好きなんです。ずいぶん前にイギリスで演奏しましたが、いつか、もう一度、やってみたいんですよ」と、少年のような眼差しで語った。

[取材・文/寺西 肇]

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2015-09-17 15:56 この記事だけ表示