いよいよ公演迫る!宇野功芳氏も絶賛の上岡の≪悲愴≫が視聴できます![公演情報]
《未来のシューリヒト》として、ぼくがいま最も期待する若手、上岡敏之。10月の来日公演にはそのすべてに足を運び、少しでも多く彼の本質や才能に触れてみたいと思っている。なにしろ、まだ3回しかライヴに接したことがなく、そのうち1回はN響との「第九」で、上岡の力が十分に発揮されず、2階正面で聴いたがホールの響きも悪く、聴いた回数には入れられないからだ。
 その上岡が手兵ヴッパータール交響楽団を振った初めてのライヴ・セッション録音が2枚リリースされることになった。
この「悲愴」ともう1枚はブルックナーの「7番」だが、後者は未聴である。
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◆宇野功芳氏も絶賛の上岡の≪悲愴≫が視聴できます!
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チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74 《悲愴》
収録:2007年5月13、14日 ヒストーリッシェ・シュタットハレ(ヴッパータール)におけるライヴ収録
発売日:2007年10月9日


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 上岡は第二のシューリヒトである、と書いた。つまり速いテンポで淡々と進めながら薄味にならず、随所に名人芸がかくされ、ときには数少ない大爆発を起こす(小爆発のときもある)。つまりマイクにすべてが入り切らないタイプで、本当のところは実演でしか分からず、それもよほど耳の良いクラシック・ファン、通のファン向けの演奏なのだ。
「悲愴」の第1楽章序奏部からその芸は細かい。バスの半音下行を微妙に生かした綿密なハーモニー、スコアの強弱指定変更が連続、名残り惜しげな終結まで、それが何気ないだけに聴き逃してしまう人も多いだろう。

 主部は逆に速めのテンポと敏感なリズムで爽やかに運ぶ。力みなく、淀みなく、それでいて38小節のヴァイオリンのffをすぐにディミヌエンドしてしまうデリケートなセンスや、その後の高弦、低弦のかけ合いの周到な活かし方など、極めて上質な音楽が鳴っている。
第2首題の歌い方も濃厚ではないが、直前の間(ま:ルビ)は大変長い。

 展開部に入る前の木管は聴こえないくらい弱いが、チャイコフスキーのスコアを見るとpが6つ書いてある。p p p p p p !
これは異常としかいいようがないが、その異常を上岡は初めて生かしたのだ。とはいえ、その本当の味はライヴでないと分からないだろう。
展開部のアレグロ・ヴィヴォは速く、力まず、アンサンブルを見事に整え、各楽器の音型を鮮やかな棒さばきで操る。
再現部に入ってからも微妙な強弱はあるが、一見なんの仕かけもなく、一気に運んでしまうシューリヒト・スタイルで、クライマックスの強調などいっさいない。しかし、これが曲者で、客席で耳にしたら、おそらく違う印象を持つのではあるまいか。

 第2楽章もすっと運ぶ。トリオもイン・テンポで何もしていないように見えるが、実は1小節づつ交代で強弱を買えているのだ。
注意深い耳でないと捉えられないほど何気なく!再現部の途中では急にfがmpに落ちる名人芸的なニュアンスが待っている。
これは誰でも分かるだろう。おどろくのは160小節から163小節にかけてのテンポの変動で、161小節と163小節は完全に5拍子が崩されてしまっている。
こういうやり方は過去に例がないではないが、それにしても大胆な表現といえよう。

 スケルツォも決して大向こう受けを狙わず、それでいて方々にワサビを効かす。後半の行進曲主題につけられた強弱はいささかしつこく、上手の手から水がもれた感じだが、ぼくにいわせれば、あまり若いうちから完璧を目指さない方が将来の大成につながるのではないか。もっとも、このあたりもライヴの舞台で確認したいところだ。
 この楽章もずっとイン・テンポを通し、盛上げのバス・ドラム最強奏なども交えながら最後のクライマックスへ向かってゆく。
その僅かなアッチェルランドはこれぞ上岡というべきで、そのため最後の3連音が上すべりせず、十二分にトロンボーンを鳴らし切って終結するのである。
 第4楽章にはアタッカで入る。相変わらず目立った仕かけはないが、響きに薄いところ、無機的なところがかけらもないので、おそらくライヴで耳にしたらずいぶん印象が違う筈だ。
それにしても頂点におけるホルンのうめきと狂ったような弦の動きは、決して強調しているわけではないのに聴く者の心に突き刺さってくる。これも実演期待!
そしてコーダ。バスの3連音を最後まで意味深く鳴らしつつ、「悲愴」全曲を閉じるのである。

(宇野功芳)

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チャイコフスキー:交響曲 第6番 ロ短調 作品74 《悲愴》
収録:2007年5月13、14日 ヒストーリッシェ・シュタットハレ(ヴッパータール)におけるライヴ収録
発売日:2007年10月9日


2007-09-20 19:45 この記事だけ表示
 
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