それぞれに特徴が異なるザ・ロシア・オペラ3作とロッシーニ 今度のマリインスキー・オペラは圧倒的な感銘が約束されている![公演情報]
 ウィーン・フィルやMET、パリ・オペラ座といった世界の名だたる交響楽団や歌劇場から引っ張りだこの巨匠ゲルギエフは、ドイツ、イタリア、フランスと、さまざまな国の作品を自家薬籠中のものとしているけれど、やはり、なんといってもお国、すなわちロシアの作品がいちばんしっくりくる。作品に内在する魂や、スラヴ民族の血のようなものまでを隈なく掬いあげ、音に籠めて立ち上らせる、とでもいえばいいだろうか。ロシア作品のもつ力や生命がむき出しになって、聴き手はとにかく圧倒される。

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 だから私自身、マリインスキー劇場の過去5回の引越し公演は、それぞれ印象に残っているけれども、それ以上に、こんどの公演に期待が募る。なにしろ、それぞれに特徴が異なるロシア・オペラが3作、絶妙なバランスで並べられているのだから。おまけに、ロシア作品ではないけれど、ロッシーニの軽妙洒脱な喜劇で、ゲルギエフの知られざる側面も味わうことができるのだ。

■マリインスキー・オペラ
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(写真左:イーゴリ公 写真右:ホヴァーンシチナ)

 まず、中世ロシアの叙事詩を題材にした華麗な歴史絵巻、ボロディンの『イーゴリ公』。美しいメロディがあちこちに散りばめられたこの作品は、日ごろイタリア・オペラに馴染んでいる方なら、自然に惹きつけられることだろう。しかも、メロディには東洋の色彩が感じられ、それがマリインスキー管弦楽団、北の大地のような渋い響きとマッチすること、このうえない。有名な「韃靼人の踊り」を壮麗な合唱と踊りつきで楽しめる、という贅沢もある。ロシアらしい壮大なスケールで描かれた歴史劇、ムソルグスキーの《ホヴァーンシチナ》は、バスやバリトンの男性低声がたっぷりと味わえる。地を揺るがすような響きと声量を誇るスラヴ系の歌手たちの、そして同じ特徴を誇る合唱の味わいを、これほど堪能できる作品もほかにない。


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(写真左:3つのオレンジへの恋 写真右:ランスへの旅)

 一方、プロコフィエフの《3つのオレンジへの恋》は、歴史ものと並んでロシア・オペラの伝統である“お伽オペラ”で、20世紀の作品だが、原作は18世紀ヴェネツィアのゴッツィ。いわば軽妙な題材を、知的な機微に富みながら地に足がついた、洒脱な音楽でまとめたものだ。それぞれに、ほかでは味わえないぞれぞれの魅力がある“ザ・ロシア・オペラ”を、存分に堪能できる日まで、あとわずかだ。そして、もうひとつ、今回の引越し公演にはハイライトがある。ロッシーニの《ランスへの旅》。こちらは洒脱な味わいと、ベルカントの華麗な技巧がウリのイタリア作品だが、なんと言っても興味深いのは、ゲルギエフがこうしたタイプの作品に強いこだわりを示している点だ。今まで知られなかったゲルギエフのコケットな側面が明らかになりそうで、興味津々だ。さらには14人の名歌手が揃わないと上演できないこの作品、マリインスキー劇場からまたまたどんな逸材が飛び出すのか、品定めの楽しみもある。

香原斗志(かはら・とし)◎音楽ジャーナリスト

【公演情報】
■マリインスキー・オペラ

『ホヴァーンシチナ』
2008年1月26日(土)、27日(日) 東京文化会館

『3つのオレンジへの恋』
2008年1月28日(月)、29日(火) 東京文化会館

『ランスへの旅』
2008年1月31日(木)、2008年2月2日(土) 東京文化会館

『イーゴリ公』
2008年2月1日(金)、2日(土)、3日(日) NHKホール

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2008-01-18 11:26 この記事だけ表示
 
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