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今年で35周年を迎えた、東芝グランドコンサート。2月2日に都内で開かれた記者会見には、指揮でピアノ・ソリストも務めるダニエル・バレンボイムの他、3公演を指揮するダーヴィト・アフカム、シュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場管弦楽団)から楽団代表としてフォルカー・シュプレンガーとズザンネ・シェルガウトが登壇。会見コメントをお届けする。

2016年2月2日(火)の来日記者会見より

――ご自身の初めての来日公演からちょうど50年となりますが、これまでの日本公演で印象に残っていることは?

■ダニエル・バレンボイム
50年前に初めて日本に来て、年月を重ねて何度も日本に来ています。当時から、日本のお客様の集中力、そして大変静かに演奏会に耳を傾けてくれる姿に感銘を受けていました。そして当時、コンサート会場で「なぜそれだけの集中力を保っていられるのか?」と聞いたことがあります。その答えは、非常に多岐にわたっていました。その中の一人が、「日本では、ヨーロッパの音楽というのは、比較的新しいものなのです。日本でベートーヴェンの<交響曲第9番>を初めて聞けたのは、第一次世界大戦の直後で、そのころは、まだピアノの伴奏、4人の歌手、そして合唱の代わりに数名の歌手が合唱部分を受け持つという形でした。そして、40年たった今でも活発な音楽生活が営まれるようになり、多くの人がたくさんの音楽を聴いてくださっています。ですけれども、多くの人々にとって西洋の音楽を聴くということは、新しい体験であった。常に謙虚な姿勢で音楽に向き合ってくださったのだ」ということをうかがっております。もしかすると、それは日本の社会、あるいは価値観、精神的な営みに対する日本に皆さんが持っていられる敬意の表れなのかも知れません。

もちろんヨーロッパでも、そして世界中のどこで2,000人を超える大きなホールでブルックナーの交響曲を、本当にその作品を知っている方たちに聴いていただけるということは体験できるものではないし、期待できるものではありません。だからこそ聴衆の皆様の意識がより重要になると私は思っております。本当に聴衆の皆さんが真摯に耳を傾けてくださり、それは作品の中に人間的なメッセージが込められているからだと私は思っております。そして、それが変わらずに今も続いていることが私は素晴らしいことだと思います。日本はいろいろな面で世界に向かって開かれた国になってきました。この数十年の間に、世界に向かって開かれてきましたけど、こと音楽に関しては、日本の皆様は外から取り入れるべきもの、そして取り入れなくてもよいものをはっきりと見極められているのだと思います。

私が知る限り、ツィクルスとしてブルックナーの交響曲全9曲が連続で演奏されることは初めてと聞いております。私たちは、順番として敢えて1番から順番に9番まで演奏することを決めました。それは、聴衆の皆様にとっても、演奏するオーケストラの側にとっても、ブルックナーの作曲家としての成長に向き合うことにつながるからです。ひとつひとつのシンフォニーをそれぞれ聴くと、どれも似ているような印象を受けがちです。ブルックナー様式と呼ばれるものがあるのではないかと思いがちですが、決してそうではありません。すべての作品を順番に聴くという機会を私は重要と思っています。

残念ながら、帯同するアフカムさんが指揮する最後の3回の公演のときは、私は日本を離れてしまって、聴くことができないのですが、是非アフカムさんには、私が体験して同じ幸せな時間を、ここ日本で過ごしていただきたいと思っております。

――オーケストラの皆さんにとってのブルックナーという作曲家は、どんな印象がありますか?

フォルカー・シュプレンガー
我々オーケストラにとっても、ここ東京でツィクルスを演奏できることは、非常に大きな幸運です。これまでにベルリン、ニューヨーク、ウィーンで、ツィクルスでの演奏をしてきました。とても大きなプロジェクトであり、オーケストラにとってチャレンジでもあります。芸術的なチャレンジでもあり、体力的にも大きなチャレンジです。この先、パリでもツィクルスを演奏することになっていますが、一度ではなく、数回に分けての演奏となります。我々シュターツカペレ・ベルリンとしての意気込み、こだわりは、オペラもコンサートも最大限の水準で演奏するということです。アントン・ブルックナーという作曲家が、燦然と輝く存在であることは間違いありません。マーラーや他の作曲家と並ぶ非常に素晴らしい作曲家です。ですから、我々にとってこうしたツィクルスでの演奏は特別な意味があります。ベルリンでの活動では、オペラを演奏して、翌日は別の演目を、そして翌週はコンサートするなど多彩なプログラムを演奏しています。ですから、ツィクルスで演奏できることは、ひとりの作曲家の音楽言を集中して取り組む可能性を与えてくれます。こうしてツィクルスという形での演奏によってその作曲家の音楽言語をより一層深めることができます。ツィクルスで演奏するということは、マエストロ・バレンボイムがおっしゃったようにひとりの作曲家の全体像をとらえることができるチャンスを与えられることでもあります。その作曲家にとって本当に重要なメッセージはなんだったか、そこにたどり着くことができます。

――アフカムさんにとって、バレンボイムさんから学んだことや印象に残っていることは?

ダーヴィト・アフカム
マエストロ・バレンボイムのリハーサルは、毎回毎回密度の濃いマスタークラスを受けているようなものです。指揮者としての、音楽家としての、人間としてのマスタークラスを受けているようなそんな時間を積み重ねることができます。壮大に聞こえますが、まさに事実で、どのようにオーケストラと向き合うか、仕事をするかという技術的なことも含まれますが、それだけではなく、ブルックナーが何を言おうとしているか、伝えようとしているか、ということを突き詰めていく体験を一緒にできます。それは私のような若い芸術家、音楽家、指揮者にとって、本当にたとえようのないほどの価値があるもので、いくら感謝してもしつくせない気持ちでおります。

――アフカムさんが指揮する、金沢、広島、福岡の聴きどころを。

ダーヴィト・アフカム
(メインプログラムで、ブラームスの交響曲第2番を演奏しますが)私は、ブラームスが本当に大好きで、ブラームスと共に大きくなったといっても過言ではないぐらい、私にとって馴染みのある作曲家です。ちょうど11月にベルリンでこの作品をシュターツカペレ・ベルリンと共に演奏することができ、日本でも演奏したいと思っていたので、実現でき嬉しく思っています。 そしてモーツァルトの協奏交響曲では、オーケストラの中の素晴らしい4人のソリストの演奏共に充分に堪能いただけるいいプログラムだと思っているので、今から楽しみにしています。

――オーケストラとして、日本の皆様へメッセージを。

ズザンネ・シェルガウト
なるべく大勢の日本音楽愛好家の皆さんに私たちの演奏会をお楽しみいただければと願っています。私たちは、何度も日本に来ていますが、毎回来るたびに会場での聴衆の皆さんとの出会いを楽しみにしております。コンサート以外でも皆さんの暖かいおもてなしと心遣いに触れることは、毎回大きな喜びです。来年2017年10月にはベルリンのシュターツオーパー(オペラ座)が再開場いたしますので、是非皆さんベルリンに足を運んでいただいて、現地でも私たちの演奏をお楽しみいただけたらと心から願っております。

公演概要

東芝グランドコンサート35周年特別企画
ダニエル・バレンボイム 指揮・ピアノ ベルリン国立歌劇場管弦楽団

<公演日程・会場>
2016/2/3(水)  フェスティバルホール (大阪府)
2016/2/4(木)  愛知県芸術劇場コンサートホール (愛知県)
2016/2/9(水)〜2/20(土)  サントリーホール 大ホール (東京都)
2016/2/18(木)  ミューザ川崎シンフォニーホール (神奈川県)
2016/2/23(火)  石川県立音楽堂 コンサートホール (石川県)
2016/2/25(木)  アクロス福岡シンフォニーホール (福岡県)

<※出演・曲目はチケット詳細ページをご確認ください。>

2016-02-03 20:53 この記事だけ表示

 渋谷の新スポット「LIVING ROOM CAFE (リビングルームカフェ) by eplus」で開催される「サンデー・ブランチ・クラシック」。日曜日の午後に食事や会話を楽しみながら、ワンコインという手軽な価格でクラシックの生演奏が楽しめる大人のための贅沢な音楽イベント、この「サンデー・ブランチ・クラシック」3回目となる11月8日(日)に、記念すべき第1回目の出演者・反田恭平が再び登場します!


9月20日(日)に行われた第1回、反田恭平 Photo:M.Otsuka/Tokyo MDE

 “今、最も注目のピアニスト”と言われ、多方面から天才との呼び声高い反田恭平。弱冠21歳の若さとは思えぬ類まれなる表現力で、初回ライブではリスト「愛の夢」、シューマン(リスト編)「献呈」などを披露し会場を大いに沸かせてくれました。

 来る11/8(日)の演奏曲はモーツァルト「トルコ行進曲」ほか耳馴染のある楽曲も披露予定。前回参加頂いた方もそうでない方も、ぜひ気軽に足を運んで、アーティストとの距離感、これまでとは一線を画す、新しいクラシックの楽しみ方をご体感ください。



LIVING ROOM CAFE (リビングルームカフェ)by eplus
“サンデー・ブランチ・クラシック”

スケジュール

反田恭平 / ピアノ


予定曲目
モーツァルト: ソナタ第11番から 第3楽章「トルコ行進曲」
チャイコフスキー: 白鳥の湖から
リムスキー=コルサコフ/ラフマニノフ: 熊蜂の飛行
スクリャービン: 幻想曲
ほか

日 時 13:00、15:00 (各30分を予定)

【反田恭平 プロフィール】

1994年9月1日、札幌市生まれ、東京都出身の21歳。
2012年 高校在学中に、第81回日本音楽コンクールで第1位、(高校生での優勝は11年ぶり、併せて聴衆賞を受賞)し、毎日新聞社主催による全国ツアーで好評を博す。
2015年9月に東京フィルハーモニー交響楽団定期公演のソリストとし大抜擢され、同月に、新日本フィルハーモニー交響楽団と「フレッシュ名曲 コンサート」にも出演が決定している。
チャイコフスキー 記念国立モスクワ音楽院に首席(日本人初の最高得点)で入学し5月にイタリアで行われたチッタ・ ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝するなど各方面より大注目を浴びている、若手のホープ。モスクワ在住。


■反田恭平さんからコメントムービー到着



村治奏一 / クラシックギター
(※ゲスト出演 松田弦)


写真(上)村治奏一、(下)松田弦


予定曲目
スタンリー・マイヤーズ
カヴァティーナ

アントニオ・カルロス・ジョビン
フェリシダーヂ

谷川公子
※一億の祈り
(映画『火垂るの墓』より)

フランシス・クレンジャンス
※バカンスの為の小品

パウロ・ベリナティ
※ジョンゴ

日 時 13:00、15:00 (各30分を予定)

【村治奏一/Soichi Muraji プロフィール】

1997年クラシカル・ギター・コンクール、98年スペイン・ギター音楽コンクール、第41回東京国際ギター・コンクールに続けて優勝。2003年米国ボストン近郊の総合芸術高校音楽科を首席で卒業、同時期にビクター・エンタテインメントよりリリースしたデビューアルバム『シャコンヌ』がレコード芸術誌の特選盤に選ばれる。14年には初のギター協奏曲アルバム『コラージュ・デ・アランフェス』(平成26年度文化庁芸術祭参加作品)をキングレコードよりリリース。12年、「トヨタ・クラシックス・アジアツアー2012」のソリストとして抜擢され、ウィーン室内管弦楽団と共にアジア5カ国でのコンサートツアーを成功させた。13年、S&R財団ワシントン・アワードを受賞。15年春にはNHK交響楽団と<アランフェス協奏曲>を共演、好評を博した。

■村治奏一さんメッセージ
「イープラスをご覧の皆さま、こんにちは。クラシックギタリストの村治奏一です。今回はカヴァティーナやフェリシダーヂといった映画 音楽の名曲に加え、同世代のギタリスト松田弦君をお迎えして、2台のギターが織り成す繊細なプログラムをご用意致しました。クラシックギターならではの癒やしの響きをご堪能いただければ幸いです。」


■松田弦さんメッセージ
「ドレッドですが、一音入魂で美しい音を追求してる僕と、ギターの新しい可能性を追求しながらも安定感抜群な奏ちゃんとの初共演がどうなるか楽しみです。」


新倉 瞳 / チェロ


©平田貴章


予定曲目
エルガー:チェロ協奏曲より 第1,2楽章
ブルッフ:コルニドライ ほか

日 時 13:00、15:00 (各30分を予定)

【新倉 瞳 プロフィール】

8歳よりチェロを始める。当時ドイツにて、ヤン・ヴィミスリッキー氏に師事。11歳で帰国後、毛利伯郎氏に師事。
桐朋学園大学音楽学部を首席で卒業、卒業時には皇居桃華楽堂新人演奏会に出演。桐朋学園大学在学中の2006年にはCDデビューし、2009年には森下仁丹ビフィーナのCMキャラクターにも抜擢された。2010年よりスイスに留学し、バーゼル音楽院にてトーマス・デメンガ氏に師事。2015年には、ポルトガル/リスボンで開催された『Internacional Verão Clássico 2015』チェロ部門にて第1位受賞。また、カメラータ・チューリッヒのソロ首席チェリストに就任、室内楽奏者としての活躍も目覚ましい。今、一番目が離せない若手女流チェリストである。名器特別貸与者として、日本ヴァイオリンよりC.F.Landolfiを貸与されている。
http://www.hitominiikura.com


「LIVING ROOM CAFE (リビングルームカフェ)by eplus」
“サンデー・ブランチ・クラシック”

公式HPhttp://livingroomcafe.jp/
日 時 :毎回13:00、15:00 (各30分を予定)
出演者:随時お知らせいたします
料 金:ミュージックチャージ500円、別途カフェ通常利用料(飲食代)

 ※演奏中に食事も、おしゃべりもOK。
 でも素晴らしい演奏を聴いていたらおしゃべりも忘れてしまうことでしょう。
 ※お子様もご入場できます。
 ※予約は承っておりません。
 ※飲食代の他に、お一人様につき一律500円のミュージックチャージを頂戴します。
 ※お席の混雑状況によっては、ステージが見えづらい場合やご相席のお願いをする場合がございます。
 あらかじめご了承ください。
 ※お席には限りがございます。満席の場合、ご入店をお断りさせて頂きますが、悪しからずご了承ください。

2015-11-05 17:13 この記事だけ表示

 ポルトガル出身のマリア・ジョアン・ピリスは現代を代表するピアニストの一人。小柄な彼女は、超絶技巧を誇示するのではなく、その真摯で思慮深く飾らない演奏によって聴衆を魅了し続けてきた。教育活動にも熱心に取り組む彼女は、現在、ベルギーのエリーザベト王妃音楽院で後進の指導にあたり、音楽院とともに「パルティトゥーラ・プロジェクト」に取り組んでいる。

 才能ある若手ピアニストを育て、コンサートで彼らと演奏を共有するとともに、彼らを世に紹介する。コンクールや競争とは一線を画する独自の教育的なプロジェクトで、ロンドンのウィグモア・ホールをはじめヨーロッパ各地で公演を行ってきたが、日本では今回が初めての演奏となる。

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2015-10-21 13:16 この記事だけ表示

渋谷の新しいスポット「LIVING ROOM CAFE (リビングルームカフェ) by eplus」で、日曜日の午後に誰でも気軽にクラシック音楽のライブ演奏を楽しめる企画“サンデー・ブランチ・クラシック”。
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2015-10-15 18:29 この記事だけ表示


©PeterRigaud

2015年9月より、佐渡裕がトーンキュンストラー管弦楽団の音楽監督に就任した。さらに来春、早くも凱旋日本ツアーが決定! 公演詳細を速報でお届け。

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2015-10-02 13:00 この記事だけ表示

新国立劇場『ラインの黄金』ゲネプロダイジェスト動画はこちら

 「リング四部作を上演できることは劇場の誇り」と飯守泰次郎芸術監督が語る、新国立劇場の『ニーベルングの指環』の序夜『ラインの黄金』が開幕した。9/28に行われたゲネプロ(2時間45分・休憩なし)を見学した。

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2015-10-02 10:35 この記事だけ表示

 ドイツ正統派の流れをくみ、日本でも人気の高い、ゲルハルト・オピッツが、2015年から4年がかりで「シューマン×ブラームス連続演奏会」に取り組む。オピッツは、これまで東京で、2005年から08年にかけて「ベートーヴェン・ソナタ全曲演奏会」を披露し、2010年から13年までは「シューベルト連続演奏会」(全8回)を開催した。「シューマン×ブラームス連続演奏会」はそれに続くプロジェクトである。

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2015-09-29 13:24 この記事だけ表示

 フランスを代表する名ピアニスト、ミシェル・ベロフが来日し、フランス音楽によるリサイタルをひらく。ベロフは1950年にフランス北東部のエピナルに生まれた。ナンシー音楽院を経て、パリ音楽院でメシアンの妻であるイヴォンヌ・ロリオ、ピエール・サンカンらに師事した。1967年、第1回オリヴィエ・メシアン国際ピアノ・コンクールで優勝。1970年にはパリでメシアンの大作「幼子イエスに注ぐ20のまなざし」全曲を演奏した。これはロリオによる初演以来25年ぶりの全曲演奏としてセンセーションを巻き起こした。以来、ベロフはメシアン演奏の第一人者と目されている。

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2015-09-29 12:16 この記事だけ表示

 公益財団法人東京交響楽団(理事長:澤田秀雄)は、2014 年度より音楽監督を務めるジョナサン・ノット氏の任期を2026年3月まで延長すると発表した。

 当初は2020年3月までの任期を延長する予定だったが、9/7の記者会見前日、音楽監督ジョナサン・ノットより2026年までの任期延長の提案を受け、急きょ契約が決定したとのこと。

 ジョナサン・ノット氏が東京交響楽団に初登壇したのは、2011年10月(第593回定期演奏会&川崎定期演奏会第32回)、この一度の共演が決定的となり、翌2012年10月には次期音楽監督就任を発表、2014年度シーズンより3年間の契約で第3代音楽監督に就任した。現在、2シーズン目中であり、今後も1シーズンに4回の来日、計8週間の指揮を担当する

▼東京交響楽団の公演はこちら▼

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2015-09-28 19:29 この記事だけ表示

©Pacific Concert Management

 バロックから現代に及ぶ多彩なレパートリーと、端正な音楽創りで世界中の聴衆を魅了し続けてきたイギリスの巨匠、サー・ネヴィル・マリナー。90歳を超えてなお、矍鑠たる指揮ぶりで瑞々しい響きを紡ぎ続ける彼が来春、手兵であるアカデミー室内管弦楽団(アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ)を率いて再び日本の音楽ファンの前に再び降臨し、ベートーヴェンの交響曲第7番をはじめとする佳品の数々を披露する。「日本でのステージには、多くの若い聴衆が来てくれる。とても楽しみですね」と話すマリナー。音楽や楽団、そして日本への思いを聞いた。

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少年のような眼差しで語る。

 「たとえ私がいなくなったとしても、アカデミー室内管は存在し続けることでしょう。楽団では毎年、若いメンバーを迎えていますが、素晴らしい技量と音楽性を持ち、アンサンブルに加わると瞬く間に溶け込んでゆきます。ほとんどイギリス人ですが、最近は幾人かドイツ人、フランス人やアメリカ人も加わりました。そうすることで、ベストな演奏のための“温度”を保つことができる。小規模なオーケストラにおいて、奏者を選ぶには、まるで幾つかのカルテットを組むかのように、室内楽的に考えてやると、うまくゆくんです」。創立から半世紀余りを経ても、鮮烈さを微塵も失わぬ楽団運営の秘訣を語る。

 そして、「ロンドンやニューヨークと比較しても、より多くの若い人たちがコンサートに足を運んでくれるだけでなく、終演後も私に会いに来てくれます。とても嬉しいですね」と日本への思い入れを語る。次回の来日公演はベートーヴェンの交響曲第7番、プロコフィエフの交響曲第1番「古典」、ヴォーン・ウィリアムズ「トマス・タリスの主題による変奏曲」という興味深いラインナップ。「ロシア、イギリス、そしてドイツと作品の“国籍”は違うものの、その基本は、ドイツとイタリアのサウンド。そして、私は現代のレパートリーへ意識的に対峙するようにしています。今回は、ベートーヴェンに、20世紀の2つの作品を組み合わせましたが、特にこれらは、18世紀以前の音楽へ関連付けられています」。

 アカデミー室内管を率いての初来日は、1972年春。「その時のことは、よく覚えていますよ」と微笑む。神奈川公演では演奏会場の隣でボヤが起こるというハプニングも。「しばらく待ってから、楽員と共に外に避難しましたよ。誰ひとりパニックにもならず、騒ぎが落ち着いてから、演奏会を再開した。でも、停電したままだったから、後ろの方からスタッフたちが、トーチよろしく懐中電灯でステージを照らしてくれてね…(笑)。まったく、思いがけないことって、起こるものですね」と愉快そうに振り返る。

 今年5月には兵庫芸術文化センター管弦楽団を振り、11月にはNHK交響楽団との共演も予定、日本の楽団を指揮する機会も多い。「私は1950年代にロンドン交響楽団の一員として初めて来日し、ほどなく日本の楽団の指揮も始めました。最初のうちこそ余裕のない感じでたが、それほど時間を置かずに、ボストン交響楽団にもひけをとらぬ、質の高い演奏ができるようになりました。世界的に見ても、日本の楽団は、実に心地よいクラシック音楽を提供できていると思いますよ」。

 年齢を重ねるごと、先鋭さを増してゆくサウンド創り。そして、リハーサルが何時間に及ぼうと、指揮台に立ち続けるバイタリティ。若さの秘訣を尋ねると「私は生まれて来る時、父親と母親を慎重に選んだから…」と冗談を飛ばし、モーツァルトの交響曲などに聴く、近年のきびきびしたテンポ取りについても「精気あふれる演奏をしないと、聴衆が退屈しちゃうからね」とニヤリ。そして、なお「新たなレパートリーへの興味は尽きない」と話し、特にオペラへのこだわりを隠さない。「作品では、特にプッチーニの『ラ・ボエーム』が好きなんです。ずいぶん前にイギリスで演奏しましたが、いつか、もう一度、やってみたいんですよ」と、少年のような眼差しで語った。

[取材・文/寺西 肇]

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2015-09-17 15:56 この記事だけ表示